RHEL系OSにも影響?CentOS Stream 10のプレリリース版が公開
経営企画室 OSS企画チーム 森 彰吾
2024年6月、CentOSの後継OSであるCentOS Streamのプレリリース版が公開されました。この話題は、CentOS Streamを利用するユーザだけでなく、実はRHELやAlmaLinux、RockyLinuxのユーザにも関わってくる重要な情報です。
今回は、プレリリースされた最新のCentOS Stream 10について詳しく紹介します。
CentOS Streamとは
CentOS Streamは、旧CentOSの後継にあたるOSです。旧CentOSが、Red Hat Enterprise Linux(以下、RHEL)の互換OSだったのに対して、CentOS StreamはRHELのアップストリームの位置づけにあるOSです。つまり、RHELより先にCentOS Streamがリリースされ、CentOS Streamの更新内容をもとにRHELが作られるという流れになっています。
なぜCentOS Streamのプレリリースが重要なのか
CentOS Stream 10は、次にリリースされるCentOS Streamの最新版です。まだ本リリースは行われていませんが、2024年6月に次期リリースの内容をOSとしてまとめたプレリリース版が公開されました。
現状はまだ本格的に利用できる状態ではなく、調整が継続されていく見通しですが、以前のバージョンとの違いを伺い知ることができます。
そしてこの違いは、CentOS Streamユーザだけでなく、RHELユーザや、AlmaLinux/RockyLinuxなどのRHEL代替OSユーザにとっても有益な情報となります。なぜなら、前述したとおりRHELがCentOS Streamをもとに開発されること、また、RHEL代替OSはRHELをもとに作られているためです。
つまり、CentOS Stream 10での変更点は、関連する全てのOSの次期リリースの変更点につながり、それを知っておくことで今後の変更に備えることができます。
CentOS Stream 10での変更点
現時点でのCentOS Stream 10をインストールして調べたところ、インストール方法や管理方法などの側面では、RHEL9やRHEL9代替OSとの大きな違いはありませんでした。
一方で、採用されたミドルウェアやプログラム言語などは、以下のバージョンにアップデートされています。
- Linux Kernel: 6.1系
- Apache HTTP server: 2.4系
- Nginx: 1.26
- MySQL: 8.4系
- PostgreSQL: 16系
- Python: 3.12
- PHP: 8.3
その他多くの変更がありますが、全て記載できないため、細かい内容は別途公開の調査報告書をご確認ください。
また、今回のプレリリースで削除・追加されたアプリケーションも存在します。ただし、あくまで現時点での情報のため、これから削除・追加されるアプリケーションが増えたり、削除・追加が取り消されたりする可能性もあることに注意してください。
削除されたと思われるアプリケーション
現時点で削除されたと思われるアプリケーションは次の通りです。
- dhcp server(ISC DHCPサーバ)
- GlusterFS
- Bacula関連のツール類
dhcp serverは、ISC(Internet Systems Consotium)が開発を行っていたDHCPサーバです。すでに開発が終了し、ISC側では後継にあたるKeaが開発されています。RHEL9まではdhcp serverが搭載され、EOLまでサポートされる予定ですが、次期リリースからは利用できなくなる可能性が高いと考えられます。
GlusterFSは、分散ファイルシステムです。もともとRed Hat社が主導して開発を行い、「Red Hat Gluster Storage」などのRed Hat社のサービスで利用されていました。しかし、このサービスも既に終了しており、サービス終了に伴って提供も行わない方針になったことが、今回の削除の理由として考えられます。
Baculaはバックアップ製品に関連するツールですが、提供を取りやめた理由は不明です。
追加されたと思われるアプリケーション
現時点で追加されたと思われるアプリケーションは次の通りです。
- Kea
- Valkey
Keaは前述の通り、ISCが開発している新たなDHCPサーバです。ISC DHCPに代わって採用されたと考えられます。
Valkeyは、インメモリデータベースのソフトウェアです。インメモリデータベースとしてはRedisが広く知られていますが、特定バージョンからライセンスの変更が行われ、現在利用が制限されています。Valkeyは、ライセンス変更前のRedisのソースコードから作られていることから、Redisの代替として今後の発展が見込まれているソフトウェアです。OSSのライセンスで利用できるため、次期OSにも採用されたと考えられます。
なお、現時点でRedisは削除されてはおらず、ライセンス変更前のバージョンが利用できるようになっています。
その他の情報
上記では、CentOS Stream 10のプレリリース版を利用して気づいた主な変更点を紹介しました。以下では、その他の細かい情報を少しだけ記載します。
まず、管理ツール類がアップデートされており、IPアドレスの表示コマンドなどがカラーリングされて表示されるようになりました。また、wgetと呼ばれるコマンドラインのHTTPクライアントがwget2と呼ばれる後継ツールに変化していることも分かっています。
一方で、RHEL8/9の時点でサポートを終了したメーリングリストアプリのMailman2は、次期リリースではMailman3が採用されるか?という見方がありましたが、現時点では採用されていませんでした。他のメーリングリストのアプリも見つかっていないため、メーリングリスト自体の提供をやめる方向だと考えられます。
今後について
CentOS Stream 10の本リリースの時期は明確になっていませんが、おそらく2024年の内にはリリースされるのではないかと推測しています。ただ、CentOS Stream 10がリリースされたとしても、CentOS Stream自体がRHELのアップストリームであることや、サポート期間が5年間であることなど、制約の多いOSであるため、利用には注意が必要です。そのため、CentOS Stream 10の本リリースでの変更点を確認しつつ、次期RHEL、RHEL代替OSの変更に備えておくのが得策と考えられます。
デージーネットでは、ISC DHCPの終了を見据えたKeaの調査・採用、Redisの代替となるValkeyの調査、新たなメーリングリストサービスへの切り替えなどを行っています。その他、OSSの今後の動向を見据えたシステムを検討したい場合には、ぜひご相談ください。
関連ページ
CentOS Streamとは
CentOS Streamとは、2020年12月に発表された、CentOSの開発方針の変更により新たに開発されたRed Hat Enterprise Linux(RHEL)のアップストリームOSである。CentOS StreamのCentOSとの違いやCentOS Streamの利用メリット・デメリットを解説している。
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