ゼロタッチキッティングを実現〜OCS Inventory NG〜
近年、企業や自治体などでIT資産管理において注目されているキーワードのひとつが「ゼロタッチキッティング」です。ゼロタッチキッティングを採用する場合、重要となるのが正確かつ継続的な棚卸管理です。この記事では、棚卸を自動化することができるオープンソースソフトウェア、OCS Inventory NGの特徴や機能について紹介します。
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目次
ゼロタッチキッティングとは?
ゼロタッチキッティングとは、PCや端末を利用者へ配布する前に詳細な設定作業を行うのではなく、ネットワーク接続後に自動で必要な設定やソフトウェア展開を行う運用手法です。テレワークの普及や拠点分散が進む中で、端末を回収して再設定したり、台帳を手作業で更新したりといった従来型の運用は、工数やコストがかかり、キッティング担当者にとって大きな負担となります。
そこでゼロタッチキッティングを成立させるためには、端末へ遠隔で設定・配布できる仕組みや端末の状態を自動的に把握できる棚卸システムが揃っている必要があります。特に後者が不十分な場合、ソフトウェアの配布漏れや、セキュリティ対策が適用されていない端末が放置される、などの問題が発生する可能性が高くなります。
OCS Inventory NGとは

ログイン画面
OCS Inventory NG は、ネットワーク上の各種機器情報を自動収集し、IT資産の棚卸管理ができるオープンソースソフトウェアです。フランスのIT企業factorfx.comによって開発・保守が行われており、ライセンスはGNU General Public License v2.0(GPLv2)で提供されています。
ソフトウェア自体は無償で利用可能ですが、必要に応じて開発元から有償サポートを受けることもできます。有償サポートで提供されるサービスは、ホスティング、専門知識の提供、ヘルプデスク、メンテナンスなどであり、無償利用と有償利用でソフトウェア機能に差はありません。
OCS Inventory NGの特徴
OCS Inventory NGには、以下の特徴があります。
パッケージ配布でゼロタッチキッティングを実現できる
パッケージ配布機能では、クライアント端末に専用のエージェントツールを導入し、Teledeployという機能を利用することで、クライアント端末に対して以下のような操作を遠隔実行することが可能です。
- 任意のファイルの配置
- スクリプトの実行(PowerShell/Bash)
- MSI/EXE/ZIPなどのファイルのインストール・アンインストール
- 配布条件の指定(特定OS、特定グループ単位)や適用対象を自動的に限定
- カスタム処理の実行
パッケージ配布はWindowsやLniuxの端末に対応しています。

この機能により、初回ログイン後に自動で業務に必要なアプリを導入したり、セキュリティソフトの強制適用、設定変更スクリプトの一括実行などのゼロタッチキッティング運用が可能となります。
一方で、実行タイミングはエージェントとサーバの通信サイクルに依存するため、厳密な時間制御が必要な用途には向きません。また、最近はサイレントインストールに対応しているアプリケーションが大半ですが、直接インストーラーに触れることができるわけではないため、対話型インストーラーの制御は難しい点にも注意が必要です。
資産の自動棚卸ができる
OCS Inventory NGは、管理者が手動でスキャン操作を行わなくても、Windows等のクライアント端末側から自動的に資産情報を収集することができます。また、それに付随する機能として、クライアント端末へのアプリケーションの展開、およびエージェントを用いたネットワークスキャンの機能が用意されています。
棚卸作業を常時自動化することで、セキュリティソフトがインストールされていないPCや、使用が禁止されているアプリケーションをインストールしている端末を探し出すことが可能です。そのため、ゼロタッチキッティングの確実な運用につなげることができます。

導入しやすい設計
OCS Inventory NGでは、クライアントエージェントがサーバへHTTP通信を行う仕組みで動作します。HTTPは企業ネットワーク環境でも許可されていることが多く、追加のファイヤーウォール例外設定が不要となるケースが多いため、利用しやすいのも大きな利点です。
また、エージェントのデータ収集処理は軽量で、クライアントPCの負荷はほとんどありません。さらにエージェントの実行タイミングはデフォルトで1日間隔となっており、特定の時間にアクセスが集中する設計ではありません。そのため、サーバ側の負荷が特定時刻に偏ることが起きにくい構造になっているのもOCS Inventory NGのメリットの1つです。
OCS Inventory NGの機能
OCS Inventory NGの機能を詳しく解説します。
資産情報の収集
OCS Inventory NGでは、クライアント端末から以下のような情報を自動収集することができます。この機能は、パッケージ配布後の構成を確認する際に非常に有効です。
- ハードウェア情報(BIOS、CPU、メモリ、ストレージ、デバイス)
- OS・システム情報
- ソフトウェア情報(インストール済みパッケージ一覧)
- ネットワーク情報(NIC、IPアドレス、MAC、ルーティング)
- 周辺機器・デバイス情報
WEBインタフェース
OCS Inventory NGは、Webブラウザから自動収集した資産情報を表示することができます。また、検索やフィルタリング(OS、バージョン、IP範囲など)などを利用して、資産状況を探すこともできます。
資産情報の一覧確認

エージェントの実行後、サーバがデータを取得すると、OCS Inventory NGの画面に端末の一覧が表示されます。

端末名をクリックすると、メモリやインストール済ソフトウェア、OSのバージョン、ネットワーク、デバイスなどの情報が表示されます。
認証・権限設定
OCS Inventory NGはLDAP認証に対応しており、Active Directoryや389 Directory Serverと連携してWebコンソールの認証ができます。これにより、管理者アカウントをOCS Inventory NGの内部で個別管理する必要がなくなり、既存のディレクトリサービスと統合した認証運用が可能になります。
また、ユーザーアカウントごとに権限レベルを設定したり、パスワードポリシーの設定(最小長など)も可能です。
API連携
OCS Inventory NGはREST APIを利用して外部システムと連携することが可能です。
以下のような用途で活用できます。
- デバイス情報の取得・更新
- ソフトウェア情報やネットワーク情報の取得
- 自動化ツールや外部システムとの連携
例えば、社内ツールと連携して資産情報を自動取得したり、機器情報の更新や設定変更を一部自動化したりすることができます。
OCS Inventory NGの課題点
ここまで紹介したように、OCS Inventory NGはゼロタッチキッティングに役立つ便利な機能を備えていますが、一方で運用の観点では、あらかじめ認識しておくべき制限や注意点があります。
端末数増加時やPCの一斉起動時はサーバ負荷が増える
大規模環境では端末数の増加に応じてサーバ負荷が増大するため、適切なサイジングとリソース監視が必須となります。特に、PCの一斉起動時や定期通信が集中する時間帯は通信サーバに大きな負荷がかかるため、スケールアップやスケールアウトの検討が必要です。
パッケージ配布の配布タイミングは厳密に制御できない
パッケージ配布の実行タイミングはエージェント側の通信に依存しており、厳密な制御が難しいです。
モバイル端末の管理には不向き
モバイル端末(Android/iOS)管理についてはサポートが限定的であり、モバイルデバイスの管理には適していません。
REST APIの機能が限定的で、外部連携の実装には追加検証が必要
REST APIは機能的に限定されており、外部システムとの高度な連携や自動化を行う場合は別途カスタマイズや追加検証が必要です。
デージーネットの取り組み
デージーネットでは、ゼロタッチキッティングを実現するソリューションとして、OCS Inventory NGを利用したシステムの構築をご提案しています。デージーネットでシステムを構築したお客様には、導入後支援サービスとして、Open Smart Assistanceを提供しています。Open Smart Assistanceでは、ソフトウェア単体のサポートではなく、Linuxなどを含むシステム全体に対するサポートをしています。ソフトウェアにバグがあった場合には、回避方法の調査、コミュニティへの連絡による改善促進といったサポートを受けることができます。
また、OCS Inventory NGのインストール方法や使い方、詳しい機能などを調査し、調査報告書に掲載しています。調査報告書は無料でダウンロードすることが可能です。
「OCS Inventory NG調査報告書」をダウンロードする
関連情報の一覧
OCS Inventory NG調査報告書

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