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RHELのクローンOS「Rocky Linux」

OSS研究室 森 彰吾

今回は新しいRed Hat Enterprise Linux(以下RHEL)クローンOS「Rocky Linux」について紹介します。

Rocky Linuxの開発経緯

2020年末にCentOS8のサポートを2021年末に打ち切ることが急遽決定しました。CentOSはRed Hat Enterprise Linux(以下RHEL)のクローンOSとして開発され、RHELの安定性を保ちながら長期間使えるOSとして長らく利用されていました。ただ、昨年末の決定によりCentOSの利用継続が難しくなり、新しいOSへの乗り換えが必要になっています。そのような状況の中、新しいRHELクローンOSがいくつか発足しました。Rocky Linuxもその中の一つです。

Rocky LinuxはRocky Linuxプロジェクトで開発が進められています。このプロジェクトはCentOSプロジェクトの創始者であるKurtser gregoryを中心に発足しました。プロジェクトは、2021年1月頃から活動を開始していましたが、体制づくりに時間がかかったことや、開発途中にRHEL8.4がリリースされるなどの状況があり、2021年6月にRocky Linux 8.4として正式リリースを行いました。

Rocky Linuxの特徴

上述のとおりRocky LinuxはRHELのクローンOSです。RHEL8から商標やプロプライエタリなソフトウェアを取り除いたOSになります。

このためオープンソースの範囲であれば、RHEL8やCentOS8と全くと言って良いほど同じ操作が可能です。違いは名前やロゴの画像程度であるため、RHEL8やCentOS8の操作慣れたユーザであれば、同じように利用することができます。またサポート面においても、RHEL8と同じ2029年までのサポートを約束しています。

Rocky Linuxのソフトウェア提供体制

Rocky Linuxは正式リリースしてから約2ヶ月経過しました。現状、約100サイトのソフトウェアリポジトリのミラーサーバが存在します。日本にも4サイトのミラーが存在します。

Rocky Linuxのアップデート提供スピード

Rocky Linux8とCentOS8のソフトウェアリリースの速度を比較したところ、Rocky LinuxはCentOS同等の速度でソフトウェアがリリースされていることがわかっています。

RHEL8/CentOS8との違い

Rocky Linuxは、RHEL8やそのクローンであるCentOS8とは、ほぼ違いがありません。ただし、Rocky LinuxではCentOSでは提供されていないセキュリティ情報が提供されています。この情報があることにより、yumやdnfコマンドでセキュリティ情報や脆弱性のレベルを確認することができます。また、脆弱性のレベルを指定して限定的なアップデートを行えるようになっています。

AlmaLinuxとの違い

CentOS8の終了アナウンス後、最も早くリリースされたRHELクローンとしてAlmaLinuxが存在します。AlmaLinuxとRocky Linuxを比較すると次のような違いがあります。

  • Rocky LinuxはCtrl IQ社をはじめとして7社のスポンサーが付いているが、AlmaLinuxはCloudLinux社のみ
  • Rocky Linuxの方がミラーリポジトリが少ない(AlmaLinuxは現在140サイト)
  • Rocky LinuxはPowerPCに対応していない
  • Rocky Linuxはセキュアブートに対応していない(対応中)
  • Rocky LinuxはMicrosoft Azureのマシンイメージがない

AlmaLinuxの方が優れているように見える結果ですが、多くの違いはAlmaLinuxが早くリリースされたことに起因する内容です。つまり今後は差が埋まってくると考えられます。

今後の差を生む部分としてコミュニティ活動があります。CentOSの終了にスポンサー企業が関わっていたという見方があるため、コミュニティを中心として開発されているかが、選定のポイントになるためです。Rocky Linuxプロジェクトは、コミュニティ中心として開発を進めていくことを強く念頭に置いています。

対抗であるAlmaLinuxも同様ですが、AlmaLinuxは母体であるCloudLinuxの意向が強く反映されることが予想されますし、また目に見えるスポンサーもCloudLinux社のみです。AlmaLinuxも主要なスポンサーとして創始社が起業した会社であるCtrl IQ社が入っていますが、その他7社のスポンサーが付いています。つまりRocky Linuxは1社の意向だけには左右されにくい状態と考えられます。

またRocky Linuxのプロジェクトはフォーラムでの活動も活発です。最新のトピックの閲覧数は3.6万回を超えているような状態です。AlmaLinuxは、最新のトピックでの閲覧数は600回程度で、コミュニティ活動の活発さを感じることはできません。コミュニティ中心の活動という観点ではRocky Linuxが現状優勢のように思います。

CentOS8からRocky Linux8への移行

Rocky Linuxは、CentOS8からの移行ツールを提供しています。デージーネットでは、AlmaLinuxの調査時とほぼ同じ環境でCentOSからRocky Linuxへの移行を検証しました。次のような環境です。

  • Apache HTTP Server/php-fpm/phpMariaDB
  • postfix/dovecot
  • Pacemaker/Corosync/DRBDによる2ノードのHAクラスタ

特にHAクラスタ関連のパッケージは、弊社で独自にビルドしたものを利用したり、移行で問題になりそうなディストリビューション提供外のカーネルモジュール(DRBD)を、利用している状態で検証を行いました。

このような環境でも、1台あたり約20分程度で入れ替えが完了し、その後特に問題はありませんでした。もちろん本番環境の移行前には検証やバックアップなどが必要ですが、移行についても一定の安定感があることがわかっています。

今後どうなっていくか

AlmaLinuxが正式リリースされた当初は、Rocky Linuxの出遅れが致命的になると考えられました。しかしRocky Linuxは、その予想を覆すスピードで様々な対応を行っています。

例えば、RC版リリース時期のRocky Linuxでは、セキュリティ情報の提供やエラータサイトの公開は行われていませんでした。AlmaLinuxでは提供・公開がされているというフォーラムへの意見を取り入れてすぐに対応を行っています。

Rocky Linuxのリリースが遅れた要因として、プロジェクト運営の体制作りをしっかりとするために時間がかかったという話しがありました。遅れてしまった期間で、上記のように迅速に対応が可能な体制を作ることができたと考えれば、今後の動きに期待することができます。

Alma/Rocky双方ともに、まさに切磋琢磨している状態であるため現状は決めてに欠ける状態です。

デージーネットでは

デージーネット社内での検証や現在の状況を考えると、Rocky Linux/AlmaLinuxどちらも利用可能なOSであると考えています。今後の動きによってどちらかに偏ってくる可能性があるため、今後も2つのOSの動向を見守っていきます。

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