バックアップツールのOSS〜restic〜
OSS研究室 森 彰吾
今回は、バックアップツールのresticを紹介します。
resticとは、速度と効率、安全性を重視して開発されたファイルバックアップツールです。LinuxやmacOSの他に、WindowsやFreeBSDなどもサポートしています。バックアップツールには大なり小なり様々なソフトウェアが存在しますが、resticは、OSSのバックアップツールとしては非常に取り回しの良いツールです。
resticの特徴
resticには次のような特徴があります。
インストールが簡単
resticは、単一の実行ファイルを配置するだけでインストールすることが可能です。LinuxやWindowsなど、それぞれの環境で動作する実行ファイルが予め用意されているため、resticをダウンロードして対象のマシンに配置するだけで利用することができます。
自動差分同期と取り出しやすい仕組み
従来のバックアップツールは、差分同期を行う場合に、いくつか難しさがありました。特に、差分同期を行う際に細かいオプションを指定したり、バックアップを取得する場所を検討しなければいけませんでした。また、バックアップを元に戻す場合も、全体バックアップのリストア後に差分をリストアするなど、難しい手順が必要です。
resticは、全てのバックアップを自動的に差分バックアップで取得します。バックアップデータはリポジトリと呼ばれる場所に保管されるため、管理者が保管場所を毎回考える必要がありません。
また、差分バックアップはスナップショットという形で参照できます。例えば、昨日時点のスナップショットを使えば、昨日時点の全てのデータをリストアすることが可能です。
さらに、日常的なバックアップの中で変化のないファイルは処理対象にならないため、非常に高速なバックアップが可能です。
圧縮率の高い保存
resticは、ファイルをそのままの状態で保管するのではなく、同一ファイルにまとめたり、同一のデータを圧縮するなどして、リポジトリに保管します。そのため、全てのファイルをバックアップするよりも、ディスクの使用量を抑えることができます。
リモートサーバ・クラウド対応
resticは、バックアップデータをローカルディスクに保存するだけでなく、以下のような様々な場所に保管することが可能です。
- SFTP
- Amazon S3
- Minio
- OpenStack Swift
- Microsoft Azure Blob Storage
- Google Cloud Storage
特に、他のバックアップツールでは、クラウドにデータを保管する場合、独自のスクリプトを作成するなどの作業が必要な場合があります。resticは、直接クラウドにデータを保管できるため非常に便利です。
また、データの使用量を抑えることができるため、クラウド環境にバックアップした場合にクラウドの利用費を抑えられる、というのもメリットのひとつです。
セキュアなバックアップ
クラウド環境にバックアップを取る場合、特に気になるのは安全性です。攻撃を受けてデータを盗まれる危険性に加えて、クラウド事業者にデータを見られていないか？ 利用されていないか？ という懸念も付いてまわります。
resticは、リポジトリに保管するデータを暗号化して保存するため、パスワードや鍵を持っていないユーザは、データを復号化することはできません。このため、安全にデータを保管することができます。
resticの性能
当社の検証では、22万件(約16GB)の実メールデータの全件バックアップで次のような結果がでています。
- 所要時間: 6分30秒
- バックアップ後のサイズ: 約8.3GB(元データの半分程度)
さらに、そのデータからの1000件程度差分バックアップでは、次のような結果が出ています。
- 所用時間: 14秒
- バックアップ後のサイズ: 数MB程度の増加
バックアップやデータ同期によく利用されるrsyncコマンドと比較すると、resticは、バックアップ所要時間は1/4、ディスク効率は2倍、という結果になっています。
デージーネットでは
デージーネットでは、様々なシステムのお引き合いの中でバックアップのご要件を頂きます。その中で最も多いのは、バックアップ専用のシステムではなく、特定データのバックアップという内容です。
さらに昨今では、大量のデータのバックアップや、クラウドへのバックアップのご要件も多く、今後はそのような場合にresticをご提案していくことを考えています。
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