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資産管理ツールとは?無料で使えるおすすめOSS比較3選

企業が保有するPCやソフトウェア、消耗品等の資産を管理するツールとして、資産管理ツールを導入する企業が増えてきています。資産管理できるツールは様々ありますが、クラウドサービスの資産管理ツールでは、情報漏洩の危険性やコスト面で利用がためらわれる場合があります。本記事では、オンプレミス環境に構築できるOSSのおすすめ資産管理ツール「Snipe-IT」、「GLPI」、「Ralph」の3つを比較し、各種ポイントを解説します。

目次

資産管理ツールとは何か

資産管理ツールとは、ノートパソコン・プリンタ・ソフトウェア・ライセンス等の企業が保有する資産を一元で管理するツールをいいます。このような資産はIT資産とも呼ばれていますが、プリンター用紙やペンなどの消耗品も資産として管理する会社もあります。

資産管理ツールが必要な理由

企業や組織でIT資産を管理する際、以下のような課題が多くみられます。

管理に手間がかかる

組織の規模が小さいうちは、Excelなどで表を作成して台帳による資産管理ができますが、機器の数や管理対象項目が多くなるにつれて管理するファイルが増え手間になります。特に、IT資産に関しては、PC・スマホといった端末やサーバーなどのハードウェアに加え、マウスやモニターなどのPC周辺機器、インストールされているOSやアプリケーションの種類やバージョン、ソフトウェアライセンスなど管理対象が幅広く存在します。そのため、手作業で正確に全ての資産を把握するのは大変で、管理者に大きな負担がかかってしまいます。

資産の多様化

コロナ禍の影響や働き方改革から、社内の体制も変化し、管理対象となる資産の種類も多様化しています。テレワークを導入している企業の場合、社内だけでなくサテライトオフィスや従業員の自宅など、対象となる資産が複数の拠点に存在する形となります。そのため、管理者にかかる負担もより大きくなっています。

上記のような問題を解決するため、資産管理ツールの必要性が高まっています。資産管理ツールを採用することで効率的に資産を管理することができます。また、オンライン上での管理により、組織内で情報の共有もしやすくなります。

資産管理ツールを導入するメリット

資産管理ツールを選ぶことで以下のメリットがあります。

業務効率化

資産管理ツールを導入することで、WEBに接続して社内の資産を一括で管理することができます。最近ではリモート勤務のため、会社のPCやスマートデバイス等を貸し出す機会も増えてきています。固定資産に加え、OSのアップデートやウィルス対策ソフトの更新状況、従業員のモバイル端末の持ち出し状況など、多岐に渡る資産項目を管理することはとても重要です。しかし大規模な棚卸しには多数の人員を必要とし、手間やコストがかかることから優先順位が低くなる傾向もあります。管理状況をしっかり調査し資産管理ツールに記録することでこれらを一元管理できるようになり、作業にかかる負担を大幅に軽減することができます。また、資産の一覧をCSVなどの形式でエクスポートやインポートし、自動で情報を収集することができれば、無駄な作業が減り業務の効率化にもつながります。

コストの適正化

資産管理を行うことで、機器やライセンス等の使用状況を効率的に把握することができます。自社のハードウェア・周辺機器の種類や台数、インストールされているソフトウェアのライセンスの契約状況など資産状況の可視化が実現され、管理者の端末で簡単にチェックできるようになります。これにより、稼働していない端末やセキュリティの不備なども適正に管理ができるため、集計の違いによる不要な購入がなくなります。機器のメンテナンスも定期的に実施できるようになり、コスト削減に繋がります。

コンプライアンスの遵守

コンプライアンスの点でライセンス違反をしてしまうという問題があります。適正に管理をしていないとライセンスが切れていたものを使い続けてしまったり、ライセンスの期限が切れてソフトウェアが使えなくなってしまい、業務へ支障が出る可能性もあります。セキュリティソフトの更新を忘れたことで不正ログインの被害に遭ったり、もしライセンス違反をした場合、ソフトウェア会社から多額の賠償金を請求されるケースもあります。このような被害を防ぐためにも、資産管理はとても重要なソリューションとなります。また、ライセンスの管理を行っていれば、社内で誰がどのデバイスを使用しているか稼働状況を管理でき、内部不正の防止やライセンス利用の最適化にも繋がります。

情報セキュリティの強化

社員が保有しているPC・タブレットやスマートフォンには、個人情報や機密情報が含まれていることが多くあるため、情報漏洩を防止するセキュリティの観点からも適切に管理する必要があります。こうしたデバイスに対する操作のログを取得できれば、不正アクセス・不正行動の早期発見に繋がります。また、外部へ情報が漏洩するリスクなどの脆弱性があるソフトウェアの利用を防ぐことができます。例えば、万が一該当するソフトウェアに脆弱性が見つかった場合、情報システムの担当者はセキュリティパッチの適用状況を確認したり、OSのアップデートをすぐに行うよう社員へ指示を出したりする必要があります。時にはアクセス自体を制御することもあります。こうした場合も、資産管理ツールを利用することで対処しやすくなります。結果的にサイバー攻撃にあうリスクを下げ、セキュリティ対策につながります。

おすすめのOSS①:Snipe-IT

Snipe-ITとは、WEBインタフェースからログインして利用する、企業の資産を管理するためのオープンソースソフトウェアです。パソコン、ソフトウェア、ライセンスの他、USBメモリ等の外部記憶デバイスも含めたPC機器を総合的にオンライン上で管理することができます。また、IT資産ではないオフィス用品やその他の消耗品などの資産もまとめて管理ができることが強みの、使いやすく自由度の高いツールです。ログイン画面からダッシュボードも確認することができ、社内のIT資産の状況を確認分析することが可能です。デージーネットでも、導入の実績があるOSSです。

snipe-it画面

Snipe-ITには以下の機能があります。

  • WEBUIからの資産登録
  • CSVでのインポート・エクスポート
  • 資産のカテゴライズ
  • 印刷用の資産ラベル(バーコード・QRコード)の一覧表示
  • 資産と人・場所の紐付け
  • 資産の検索
  • 資産の監査
  • AD/LDAPからのユーザー連携

以下では、Snipe-ITの特長について紹介します。なお、Snipe-ITの使い方のイメージを把握したい、使えるか判断したい方は、デモをご活用いただくことも可能です。

特徴①:IT資産だけではなく様々なカテゴリの管理ができる

オープンソースソフトウェアの資産管理ツールは数多くありますが、どれもITに特化したものが多いです。しかしSnipe-ITは、IT資産管理に使うこともできますが、自由にカテゴリを決めたり、運用上必要な独自の情報を登録するための仕組みを備え、内容が充実しています。登録の制限がなく、幅広いカテゴリの統合管理が可能です。また、ExcelをCSVに変換することで一括登録を行える機能があります。一括登録も会社独自の情報にカスタマイズするなど、比較的柔軟に対応できるようになっています。

特徴②:資産の判別がしやすい

資産を名前や型番だけで管理している場合、実際の形態がどのようなものなのか分からないことがあります。Snipe-ITは、あわせて画像を登録することができるため、その物の色・形を知らなくても各画面を見ればそれがどのようなものか容易に分かるようになります。

特徴③:アラートで保証期間を管理できる

PC等の機器やソフトウェアのライセンスの多くは、保証期間や有効期間があります。期間を過ぎて使用していると、機器の故障の際に修理を受けられない等の問題が発生します。Snipe-ITでは、事前に保証期間を登録しておくことで、保証期間の満了時を自動的に検知しアラートを送信することができます。通知を受け取ることで、更新時期が迫っていることに気づくのが遅れるという問題を防ぐことができ安心です。

特徴④:資産の状態を管理できる

Snipe-ITは、資産ごとにQRコードを発行することができます。このダウンロードしたQRコードを資産に貼っておき、モバイルなどで担当者がQRコードを読み込むことで、対応した管理画面をスムーズに確認することができます。QRコードをもとに後の棚卸や監査に活用することができ、機器を探す時間や手間を削減することができます。

特徴⑤:ユーザやグループの権限管理ができる

Snipe-ITでは、システム管理者、ログイン可能ユーザ、ログイン不可ユーザと3つのカテゴリでユーザを分類することができます。ログイン不可ユーザは、資産の割り当ての際に登録するためだけのユーザになります。Snipe-ITのユーザ作成画面で一般的なユーザのIDや名前、メールアドレスなどの情報を登録することができます。また、Snipe-ITにログインできるユーザの権限は、特定のユーザやグループ単位で細かく設定が可能です。

特徴⑥:LDAP連携が可能

Snipe-ITは、AD/LDAP連携に対応しています。LDAPと連携する場合、LDAPのエントリに登録されているユーザの情報をSnipe-ITのユーザに割り当てすることができます。LDAPと連携を行っている場合、ユーザの認証の実行の際に自動的にLDAPの情報からSnipe-ITのユーザが作成されます。

特徴⑦:WindowsPCの構成情報を自動で取得できる

Snipe-ITと、デージーネットで開発したSnipe-PCViewを連携させることで、WindowsPCの構成情報を取得することが可能です。Windowsに標準機能として付いているSNMPエージェントの機能を利用して取得した情報が、Snipe-ITに自動登録されます。CPUやメモリサイズ、インストールされているソフトウェア名などの情報を取得することができ、効率よくIT資産の管理を行えます。

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おすすめのOSS②:GLPI

GLPIは、オープンソースのヘルプデスクとIT資産を管理するためのソフトウェアです。開発プロジェクトのベースは、2003年に開始されました。その後、プロジェクトはいくつかの変遷をたどりながら、現在まで開発が続いている比較的古いソフトウェアです。GLPIは、資産のカテゴリーを細かく設定することができます。デフォルトで30種類以上の種別が用意されており、種別ごとに登録できるフィールドが大量に存在します。種別はITに特化しており、IT資産管理向けのツールです。

GLPI画面

その他に以下のような機能があります。

  • 機器・ライセンス等の資産管理
  • ユーザサポートチケットの管理
  • 貸出の管理・貸出の予約
  • 詳細検索条件の登録
  • 条件によるアラート
  • LDAP 認証
  • プラグイン機構

GLPI登録画面

しかし、GLPIにはデータのインポート機能や、独自の情報を登録するためのカスタムフィールドの機能はありません。このような機能はプラグインを追加することで、実装することができます。ただしプラグインは公式プロジェクトでサポートされているわけではなく、プラグインの利用のためGLPIネットワークと呼ばれる別のサイトに会員登録する必要があることが課題となります。

資産の管理ポリシー

GLPIは、資産を細かく登録できる種別が多く用意されています。しかし、用意された分類全てに情報を登録する形式となっているため、管理したくない情報も登録をする必要があります。前述のSnipe-ITは、既定の分類が少なく広い用途で使える分類が用意されており、運用に合わせて追加することもでき、登録フィールドも独自に追加可能です。これに対しGLPIは、使い方の自由度が比較的低いため、運用の方法を仕様に合わせて変える必要があります。

資産の重要度

GLPIはIT資産に重点をおいたソフトウェアです。オフィス資産の管理も、PCなどのIT機器の管理の項目が多く、一般的な項目は利用できません。また、データのインポートを行うためには、プラグインを利用する必要があります。GLPIは、上記の通り自由度が低く、消耗品の消費などを管理することができず、IT資産の管理しか行うことができません。

検索性

GLPIは、検索機能が非常に豊富で多機能です。また検索条件を登録しておいて使い回すなど、運用上嬉しい機能が存在しています。Snipe-ITよりも詳細な検索ができ、条件を保存しておくこともできます。

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おすすめのOSS③:Ralph

Ralphは、Allegro Tech社によって2011年から開発されているソフトウェアです。GLPIよりもさらにIT資産管理に特化しており、データセンター管理(DCIM: Data Center Infrastructure Management) を目的としたソフトウェアです。GLPIと同様に、予め分類された種別に情報を登録できるようになっています。

RALPH画面

Ralphには次のような機能があります。

  • 機器・ライセンス等の資産管理
  • オフィス用IT 機器の管理(利用状態の管理含む)
  • ネットワーク/ドメインの管理
  • CSV インポート・エクスポート
  • カスタムフィールド
  • LDAP 認証

RALPH登録画面

懸念点として、Ralphのバージョン2系では、多言語対応ができていましたが、アップグレードが行われ3系にバージョンアップされた際に言語切り替えができなくなっています。

資産の管理ポリシー

Ralphは、IT資産管理に特化しており、データセンター管理の特色が強いソフトウェアです。あらかじめ用意された分類で情報を登録する必要があり、分類毎に登録フィールドも大量に存在します。そのため、必要な項目のみを選択して運用することは難しく、大量の登録項目をすべて登録する必要があります。Snipe-ITと比較すると項目を自由に変更することができないため、Ralphの仕様に合わせて運用する必要があります。

資産の重要度

Ralphは、IT機器のインベントリ情報の管理項目が多く、一般的な項目は利用できません。IT資産管理に特化していて、上記の通り自由度が低く、消耗品の消費などを管理することができません。

検索性

Ralphは、検索機能が非常に多機能です。また検索条件を登録しておいて使い回すなど、運用していく上で便利に活用することができます。Snipe-ITよりも詳細な検索ができ、条件を保存しておくこともできます。

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資産管理ツールを選ぶ際のポイント

現在は、さまざまな形で資産管理ツールが提供されています。中には、特定の業種や業界に特化したツールもあります。この記事で紹介したような無料で利用できるオープンソースソフトウェアだけでなく、月額プランで料金が設定されたSaaS型のサービスや、対象規模やオプションにより価格が異なるパッケージソフトなどもあります。様々なツールの中から最適な資産管理ツールを選び、自社に合った運用をするために、以下のような点に考慮して導入を検討する必要があります。

  • 管理対象となる資産の種類
  • 資産の台数や量、利用規模
  • どのような資産情報を管理したいか
  • 利用者のニーズに応じた機能が搭載されているか
  • 価格は最適か
  • セキュリティの安全性

例えば、セキュリティに厳しい企業や官公庁では、情報漏えいなどの危険性から、社外のネットワークに接続することができないなどの通信の制限があります。こうした場合は、オンプレミスやプライベートクラウドなどの組織内の環境に構築できる、OSSを選定するのがおすすめです。

また、従業員数の多い企業ではツールを利用するアカウント数が多いため、コスト面や管理面で大きな負担がかかります。このような場合もOSS版の資産管理ツールが適しています。OSSはライセンスフリーで配布されているため、利用自体は無料で、会員登録などの作業も不要です。そのため、費用や管理の手間を抑えて利用することができます。

ただし注意点として、現在も継続的にメンテナンスされているOSSの資産管理ツールは非常に少ないです。この記事で紹介したような、継続してメンテナンスが行われているOSSを選ぶことをおすすめします。

デージーネットの取り組み

デージーネットでは、OSSの資産管理システムを利用したシステム構築サービスを行っています。弊社で資産管理システムを構築した際には、導入後のサポートとしてOpen Smart Assistanceという保守サービスを提供しています。このサービスでは、使い方から運用方法までに至る幅広い範囲でのQ&Aや、セキュリティの情報提供、障害調査など、安心してシステムを利用して頂けるよう管理者の業務をサポートします。

また、デージーネット社内では実際にSnipe-ITを導入し、IT資産や消耗品等の管理・運用を行っています。Snipe-ITは、資産管理に優れたソフトウェアではありますが、使用する上でまだまだ課題があります。デージーネットでは、課題である日本語の修正を行い、Snipe-ITのREST APIを利用して一括貸出のバッチスクリプト等を作成します。そして、今後はよりお客様の使いやすい形で提案を行ってまいります。

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