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OSSのカレンダーサーバとクライアント比較5選(2021年版)

カレンダーサーバとは?

カレンダーサーバとは、複数のユーザの予定を統一的に管理し、オンラインで共有するためのサーバです。

以前は、予定管理といえば手帳が主流でした。しかし、最近ではビジネスでもプラベートでも、デジタルのカレンダーの機能を使って予定を管理する人が増えています。スマートフォンの普及により、手軽にカレンダー機能が利用できるようになったことが、その要因でしょう。また、GoogleやYahoo!などのクラウドサービスでも、カレンダーの機能が提供されています。

ビジネスでは、以前はオフィスやグループウェアでカレンダー機能が提供されていました。しかし、プライベートな予定をスマートフォンのスケジューラー・アプリで管理している人にとって、これらのソフトウェアは決して使い勝手が良いものではなくなりつつあります。ビジネスのスケジュール管理もスマートフォンのアプリで行いたいという人が増えているのです。そのため、カレンダーに求める機能も大きく変わりつつあります。

ここでは、そのような現状を踏まえながら、カレンダーの機能を提供するOSSを紹介します。

カレンダーの規格

インターネットでは、カレンダーのような予定管理を行うための標準として、いくつかの規格が使われています。ここでは、カレンダーの規格について紹介します。

iCalendar

iCalendarは、カレンダーソフトウェアで使われるスケジュールの標準フォーマットです。RFC2445、RFC5545で規定されています。カレンダーソフトウェアのデータ保存フォーマットやカレンダーソフトウェア間のデータ交換などで使われています。iCalendar形式のファイルは、Windowsでは.ical、.ics、iifb、icalendarなどの拡張子で保管されます。また、メールやWebなどでデータを交換する場合には、text/calendarというMIME形式が使われています。

iCalendarは、仕様上はデータ通信方式は問いません。予定の通知のためにメールで送付したり、WebDAVで予定を共有するなどの方法で使われることもあります。

CalDAV

CalDAVは、WebDAVを用いたカレンダーサーバのための標準規格でRFC4791で規定されています。カレンダーの配布、同期などの機能を持ち、データフォーマットはiCalendarを採用しています。

最近では、スマートフォンアプリのほとんどがCalDAVに対応しています。また、PCのアプリケーションでも、CalDAVに対応したクライアントが増えています。そのため、CalDAVに対応したカレンダーサーバを使えば、様々なデバイスからカレンダーを参照することができるようになります。

カレンダーのソフトウェアに求められる機能

ここでは、まずカレンダーのソフトウェアに求められる機能について整理しておきます。ここで紹介する機能は、厳密にはカレンダーサーバの機能というよりも、表示するクライアント側のアプリケーションの機能です。

カレンダーの表示と閲覧

まずは、カレンダーの表示機能です。

WEB対応

従来のグループウェアやオフィスソフトウェアでは、PC上の専用のアプリケーションでカレンダーを閲覧するものが主流でした。しかし、最近のカレンダーソフトウェアでは、ブラウザでカレンダーを表示・管理できるソフトウェアが多いようです。

外部連携(CalDAV)

CalDAV機能を備えていれば、iPhoneやAndroidなどのスマートフォンからスケジュールを確認することができます。

他のカレンダーの閲覧

ビジネスで利用するには、自分の予定だけではなく、他者のカレンダーを閲覧できると便利です。1つの画面の中に、色分けして複数の予定を表示するのが一般的です。

予定のインポートとエクスポート

予定のインポート機能があれば、他のカレンダーに登録されているスケジュールを読み込むことができます。予定のエクスポートの機能があれば、予定をバックアップしたり、別のソフトウェアに移したりすることができます。

予定管理機能

ほとんどのカレンダーのソフトウェアには、単純な予定の設定だけではなく、予定管理に便利な機能を提供しています。ここでは、予定管理機能について紹介します。

予定のコピー

ビジネスでは、同じような予定を何度も行うことがあります。そのため、1つの予定をコピーして、新しい予定を作ることができると便利です。

リマインダー機能

予定の時間になったら、何らかの方法で通知をする機能です。事前に予定を把握することができるように、予定の時間の5分前とか、1時間前とかに通知するように設定することができる場合もあります。カレンダーをスマートフォンと連携している場合には、通知を有効にしておくと、スマートフォンに通知を出すこともできます。

繰り返し予定

毎週月曜日の朝9時〜10時とか、毎月第三火曜日の13時のような定期的な予定を設定する機能です。定期的な会議や、毎月の業務などを管理するのに便利に利用することができます。

終日予定

一般的な予定は、「7月13日13:00〜14:00」といったように日付と開始時間、終了時間で管理します。終日予定は、この時間指定を行わない予定です。その日のメモやタスクなどを登録することもでき、設定ができると便利です。

カレンダーの共有と制御

ビジネスでは、自分のカレンダーだけではなく、他者のカレンダーを確認したり、他者に予定を通知したりすることができると、非常に便利です。例えば、会議の日程を調整する場合に、調整を担当する人が全員のスケジュールを見ることができれば、迅速に日程の調整を行うことができます。ここでは、カレンダーの共有と制御の機能について解説します。

閲覧範囲の制御

ビジネスでカレンダーを使う場合には、カレンダーを公開する相手を選択できるようにする必要があります。特に大きな組織では、全員のカレンダーを同時に表示することは混乱のもとです。たくさんの人のカレンダーを表示すると、本当に見たいカレンダーを探すのにも、予定の読み込みにも時間が掛かってしまいます。そのため、本当に必要な人にだけが閲覧できるように設定する必要があります。

共有カレンダー

他の人と共有で使うカレンダーを作成する機能です。例えば、部門の予定、全社の予定、会社の休日のようなカレンダーを作っておいて、みんなで共有することができれば、1人ひとりが自分で登録する手間を省くことができます。共有カレンダーを使って、施設予約のような用途にカレンダーを使うことも可能です。

複数カレンダーの作成

1人で複数のカレンダーを作成することができる機能です。例えば、プラベート用のカレンダーとビジネス用のカレンダーを分けて管理したい場合などに利用することができます。

プライベートな予定の管理

カレンダーやスケジュールを他者から見えないようにする機能です。スケジュールごとにプライベート設定をする方法と、カレンダー全体を他者から見えないようにする方法があります。1人で複数のカレンダーを作成することができれば、そのうちの1つをプライベートなカレンダーにしておくと便利です。

会議通知

同じ会議に参加する人に、会議通知を行う機能です。参加の承認/否認を求めたり、自動的に相手の予定に登録するなどの機能があると、予定の調整にも利用することができます。

OSSのカレンダーソフトウェア

オープンソースソフトウェアのカレンダーを使うと、クラウドサービスとは異なり、人数による課金などを心配する必要がありません。また、ライセンス費用などのコストの心配もありません。OSSを活用して、自社専用のサーバを作成することで、セキュリティ的にも安心な環境を実現することができます。

ここでは、カレンダー機能を持つ代表的なオープンソースソフトウェアとその特徴を紹介します。

Thunderbird Lightning

Thunderbirdのカレンダー

Thunderbirdは、オープンソースのメールソフトウェアです。Windows、Mac、Linuxなどで動作するアプリケーションです。Lightningというアドオンを追加することで、メールソフトウェアと統合してカレンダーを使うことができるようになります。

カレンダーのクライアントとしては、ここで紹介するソフトウェアの中で最も高機能です。WEB画面ではなく、アプリケーションで利用したい人向けのソフトウェアです。CalDAVにも対応しているため、CalDAVに対応したカレンダーサーバと連携して、予定を管理することができます。

なお、Thunderbird Lightningで、他者の予定を閲覧するためには、相手のCalDAV URLを入手して登録する必要があります。

Nextcloud Calendar

Nextcloudのカレンダー

Nextcloudは、オンラインストレージ機能を提供するオープンソースソフトウェアです。Webブラウザからオンラインストーレジとして利用でき、さらにWebDAVサーバとして利用することもできます。NextcloudのCalendarプラグインを使うと、CalDAVに対応した使いやすいカレンダー機能を追加することができます。カレンダーのWebUIは、NextcloudのWeb画面と統合され、とても使いやすいものになっています。さらに、CalDAVを経由してPC(Thunderbird)やiPhone、Androidなどのスマートフォンのスケジューラ・アプリ等と連携することもできます。

NextcloudのCalendarプラグインはプラグインではありますが、非常に高機能です。ここで紹介したほとんどの全ての機能を提供しています。WEB GUIから、予定をドラックして移動したり、予定の枠をドラックすることで時間の修正などを行うこともできます。予定にはタイトル以外に詳細なメモを付加することもできます。ただし、予定のコピーを行うことはできません。ここで、紹介するカレンダーサーバの中では、最も「おすすめ」のソフトウェアです。

Roundcube Calendar

Roundcubeのカレンダー

Roundcubeは、オープンソースのWebメールのソフトウェアです。Roundcubeでは、kolab/calendarプラグインを使用することにより、Webブラウザからスケジュール機能を使用することができます。しかし、他者の予定の共有や共有カレンダーなどの機能は提供していません。外部連携機能としては、iCalendar形式のファイルを提供しており、他のカレンダーアプリにより予定の表示も行なえます。ただし、外部からの予定の編集については対応していません。iCalendar形式の招待メールの送受信、iCalendar形式の予定のインポートが可能です。Roundcubeは、非常に高機能なWEBメールのソフトウェアですので、WEBメールと統合して利用したい人向けのツールです。

MEDACA

MEDACAは、デージーネットが開発したCalDAV対応のカレンダーサーバのソフトウェアで、オープンソースソフトウェアとしてGPLライセンスの下で提供されています。バックエンドのデータベースとして、LDAPを利用しています。Thunderbirdやスマートフォンと連携して予定を管理することができますが、残念ながらCalDAVに対応したWebアプリケーションが少なく、Web経由での利用が難しい状況です。そのため、デージーネットでも、最近ではNextcloudの利用を推奨しています。

SHIRASAGI

SHIRASAGIのカレンダー

SHIRASAGIは、オープンソースのグループウェアです。WEBメール、掲示板、設備予約、ワークフローなどに対応しています。SHIRASAGIのカレンダー機能は、CalDAVなどには対応していません。そのため、Thunderbirdやスマートフォンなどと連携して予定を管理することはできません。

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