無料で使えるカレンダーソフトのOSSとは?比較6選
最近ではビジネスでもプラベートでも、デジタルのカレンダー機能を使って予定を管理する人が増えています。特に、外出先などでもスケジュール管理ができるよう、ビジネスのスケジュール管理もスマートフォンのアプリで行いたいという人が増え、カレンダーに求める機能も大きく変わりつつあります。ここでは、オープンソースソフトウェアとして公開されており、無料で使うことのできるカレンダーアプリを紹介します。
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目次
カレンダーソフトとは?

カレンダーソフトとは、複数のユーザの予定を統一的に管理し、オンラインで共有するためのソフトウェアのことです。
以前は、予定管理といえば手帳や紙のカレンダーが主流でした。しかし、最近ではビジネスでもプラベートでも、デジタルのカレンダーの機能を使って予定を管理する人が増えています。スマートフォンの普及により、手軽にカレンダー機能が利用できるようになったことがその要因でしょう。また、GoogleやYahoo!などのクラウドサービスでも、カレンダーの機能が提供されています。
ビジネスでは、以前はオフィスやグループウェアでカレンダー機能が提供されていました。しかし、プライベートな予定をスマートフォンのスケジューラーやアプリで管理している人にとって、これらのソフトウェアは決して使い勝手が良いものではなくなりつつあります。ビジネスのスケジュール管理も、パソコンだけではなくスマートフォンのアプリでも行いたいという人が増えているのです。ここでは、そのような現状を踏まえながら、カレンダーアプリとして利用できるOSSを紹介します。
カレンダーの規格
インターネットでは、カレンダーのような予定管理を行うための標準として、いくつかの規格が使われています。ここでは、カレンダーの規格について紹介します。
iCalendar
iCalendarは、カレンダーソフトウェアで使われるスケジュールの標準フォーマットです。RFC2445、RFC5545で規定されています。カレンダーソフトウェアのデータ保存フォーマットやカレンダーソフトウェア間のデータ交換などで使われています。iCalendar形式のファイルは、Windowsでは.ical、.ics、iifb、icalendarなどの拡張子で保管されます。また、メールやWebなどでデータを交換する場合には、text/calendarというMIME形式が使われています。
iCalendarは、仕様上はデータ通信方式は問いません。予定の通知のためにメールで送付したり、WebDAVで予定を共有するなどの方法で使われることもあります。
CalDAV
CalDAVは、WebDAVを用いたカレンダーソフトのための標準規格でRFC4791で規定されています。カレンダーの配布、同期などの機能を持ち、データフォーマットはiCalendarを採用しています。
最近では、スマートフォンアプリのほとんどがCalDAVに対応しています。また、PCのアプリケーションでも、CalDAVに対応したクライアントが増えています。そのため、CalDAVに対応したカレンダーソフトを使えば、様々なデバイスからカレンダーを参照することができるようになります。
カレンダーのソフトウェアに求められる機能
ここでは、カレンダーソフトに求められる機能について整理しておきます。
カレンダーの表示と閲覧
まずは、カレンダーの表示機能です。
Web対応
従来のグループウェアやオフィスソフトウェアでは、PC上にダウンロードした専用のアプリケーション内でカレンダーを閲覧するものが主流でした。しかし、最近のカレンダーソフトでは、Webブラウザでカレンダーを表示・管理できるものが人気となっています。
外部連携(CalDAV)
CalDAV機能を備えていれば、iPhoneやAndroidなどのスマートフォンからスケジュールを確認することができます。
他のカレンダーの閲覧
ビジネスで利用するには、チームで予定を合わせることも多いため、自分の予定だけではなく、他ユーザーのカレンダーも閲覧できると便利です。1つの画面の中に、色を分けて複数の予定を表示する形が一般的です。
予定のインポートとエクスポート
予定のインポート機能があれば、他のカレンダーに登録されているスケジュールを読み込むことで、簡単にカレンダーの作成や更新ができます。また、エクスポートの機能があれば、予定をバックアップしたり、別のソフトウェアに移したりすることができます。
予定管理機能
ほとんどのカレンダーソフトウェアには、単純な予定の設定だけではなく、予定管理に便利な機能が搭載されています。ここでは、予定管理機能について紹介します。
予定のコピー
ビジネスでは、同じような仕事の予定が何度も入ることがあります。そのため、1つの予定をコピーして、新しい予定を作成できると便利です。
リマインダー機能
予定の時間になったら、何らかの方法で通知をする機能です。事前に予定を把握することができるように、予定の時間の5分前、1時間前などに通知するように設定することができる場合もあります。カレンダーをスマートフォンと連携している場合には、通知を有効にしておくと、スマートフォンに通知を出すこともできます。
繰り返し予定
毎週月曜日の朝9時〜10時、毎月第3火曜日の13時といったような定期的な予定を設定する機能です。定期的な会議や、毎月の業務などを管理するのに便利に利用することができます。
終日予定
一般的な予定は、「7月13日13:00〜14:00」といったように日付と開始時間、終了時間を設定して作成します。終日予定は、この時間指定を行わず、終日で設定する予定です。その日のメモやタスクなどを登録することもできると、より便利に使いやすくなります。
カレンダーの共有と制御
ビジネスでは、自分のカレンダーだけではなく、他の人のカレンダーを確認したり、他の人に予定を通知したりすることができると、非常に便利です。例えば、会議の日程を調整する場合に、調整を担当する人がグループ全員のスケジュールを見ることができれば、迅速に日程の調整を行うことができます。ここでは、カレンダーの共有と制御の機能について解説します。
閲覧範囲の制御
ビジネスでカレンダーを使う場合には、カレンダーを公開する相手を選択できるようにする必要があります。特に大きな組織では、全員のカレンダーを同時に表示することは混乱のもとです。たくさんの人のカレンダーを表示すると、本当に見たいカレンダーを探すのにも、予定の読み込みにも時間が掛かってしまいます。そのため、本当に必要な人だけが閲覧できるように設定する必要があります。
共有カレンダー
他の人と共有で使うカレンダーを作成する機能です。例えば、部門の予定、全社の予定、会社の休日のようなカレンダーを作成しておいて、みんなで共有することができれば、1人ひとりが自分で登録する手間を省くことができます。共有カレンダーを使って、施設予約のような用途にカレンダーアプリを使うことも可能です。
複数カレンダーの作成
1つのアカウントで複数のカレンダーを作成することができる機能です。例えば、個人で利用するプラベート用のカレンダーと、社内で共有するビジネス用のカレンダーをそれぞれ作成し、色分けして管理するような運用が可能になります。
プライベートな予定の管理
カレンダーやスケジュールを他の人から見えないようにする機能です。スケジュールごとにプライベート設定をする方法と、カレンダー全体を人から見えないようにする方法があります。1人で複数のカレンダーを作成することができれば、そのうちの1つをプライベートなカレンダーにしておくと便利です。
会議通知
同じ会議に参加する人に、会議通知を行う機能です。参加の承認/否認を求めたり、自動的に相手の予定に登録するなどの機能があると、予定の調整にも利用することができます。
OSSのカレンダーソフトウェア
OSSのカレンダーを使うと、一般的な製品やクラウドサービスとは異なり、人数による課金などを心配する必要がありません。また、ライセンス費用も無料のため、コストを抑えた運用が可能です。OSSを活用して、自社専用のサーバで管理することで、セキュリティ的にも安心な環境を実現することができます。ここでは、カレンダー機能を持つ代表的なOSSとその特徴を紹介します。
Nextcloud Calendar

Nextcloudは、オンラインストレージ機能を提供するオープンソースソフトウェアです。Webブラウザからオンラインストレージとして利用でき、さらにWebDAVサーバとして利用することもできます。NextcloudのCalendarプラグインを使うと、CalDAVに対応した使いやすいカレンダー機能を追加することができます。カレンダーのWebUIは、NextcloudのWeb画面と統合され、とても使いやすいものになっています。さらに、CalDAVを経由してPC(Thunderbird)やiPhone、Androidなどのスマートフォンのスケジューラ・アプリ等と連携することもできます。
NextcloudのCalendarプラグインはプラグインではありますが、非常に高機能です。ここで紹介したほとんどの全ての機能を提供しています。Web GUIから予定をドラッグして移動したり、予定の枠をドラッグすることで時間の修正をするといった操作も行うことができます。予定のコピーを行うことはできませんが、予定ごとのタイトルの入力のほか、詳細なメモを付加することもできます。ここで紹介するカレンダーソフトの中では、最も「おすすめ」のソフトウェアです。
「Nextcloud〜オンプレで使えるオンラインストレージの特徴〜」へ
Roundcube Calendar

Roundcubeは、非常に高機能なWebメールのOSSです。プラグインが豊富に用意されており、その中のkolab/calendarプラグインを使用することにより、Roundcube内に個人カレンダーを表示することができます。外部連携機能としては、iCalendar形式のファイルを提供しており、他のカレンダーアプリと連携した予定の表示も行えます。ただし、外部からの予定の追加/削除や変更など、編集については対応していません。また、他のユーザとの予定の共有や共有カレンダーなどの機能もありません。Webメールと統合して利用したい人向けのツールです。
「無料で使えるWebメールソフトのおすすめOSS〜Roundcube〜」へ
Thunderbird Lightning

Thunderbirdは、オープンソースのメールソフトウェアです。Windows、Mac、Linuxなどで動作するアプリケーションです。Lightningというアドオンを追加することで、メールソフトウェアと統合してカレンダーを使うことができるようになります。
カレンダーのクライアントとしては、ここで紹介するソフトウェアの中で最も高機能です。Web画面ではなく、アプリケーションで利用したい人向けのソフトウェアです。CalDAVにも対応しているため、CalDAVに対応したカレンダーアプリと連携して、予定を管理することができます。
なお、Thunderbird Lightningで、他者の予定を閲覧するためには、相手のCalDAV URLを入手して登録する必要があります。
MEDACA
MEDACAは、デージーネットが開発したCalDAV対応のカレンダーサーバのソフトウェアで、OSSとしてGPLライセンスの下で提供されています。バックエンドのデータベースとして、LDAPを利用しています。グループウェアの一部として提供されるカレンダー機能と違い、MEDACAはシンプルにカレンダー機能のみを持つOSSで、Thunderbirdやスマートフォンと連携して予定を管理することができます。しかし、残念ながらCalDAVに対応したWebアプリケーションが少なく、Web経由での利用が難しい状況です。そのため弊社でも、最近ではNextcloudの利用を推奨しています。
SHIRASAGI

SHIRASAGIは、オープンソースのグループウェアです。Webメール、掲示板、設備予約、ワークフローなどに対応しています。SHIRASAGIのカレンダー機能は、CalDAVなどには対応していません。そのため、Thunderbirdやスマートフォンなどと連携して予定を管理することはできません。
Cal.com

Cal.comとは、Cal.com,Inc.が開発したオープンソースの日程調整ツールです。採用の面接や、面談・打合せなどの日程調整、商談のアポ取りなど、さまざまなビジネスシーンで活用することができます。NextCloudのカレンダーアプリやGoogleカレンダー、Web会議システムのJitsiなど、外部システムとの連携も可能です。
デージーネットの取り組み
デージーネットでは、カレンダーソフトとして使えるOSSを各種扱っており、お客様のご要望や用途に合わせた最適なシステムをご提案可能です。また、弊社でシステムを構築したお客様には、導入後支援として「Open Smart Assistance」という保守サービスも提供しています。保守サービスの内容として、OSSやソフトウェアの利用方法に関するQ&Aの受け付け、障害発生時の調査、ソフトウェアの脆弱性などのセキュリティ情報の提供等を行っています。
関連情報の一覧
Nextcloud〜オンプレで使えるオンラインストレージの特徴〜
Nextcloud(ネクストクラウド)は、オープンソースのオンラインストレージです。DropboxやGoogle Driveなども有名ですが、Nextcloudはライセンス料が不要で、オンプレミス環境に構築できるのが最大の強みです。ここでは、Nextcloudの特徴や活用方法を紹介します。

無料で使えるWebメールソフトのおすすめOSS〜Roundcube〜
Roundcubeは、ライセンス無料で使用できる高機能なWebメールソフトです。ブラウザへアクセスさえできれば、スマートフォンやタブレット、自宅のPCなど、デバイスや場所を選ぶことなくメールをチェックすることができます。ここでは、主な機能の他、カスタマイズや人気のプラグインについても紹介します。

デージーネットのOSS「MEDACA」
MEDACAとは、CalDAV形式でカレンダー機能を提供するサーバアプリケーションです。カレンダーの機能は、グループウェアの一部として提供されることが多いですが、導入の際に、グループウェアについている余分な機能がデメリットになる場合があります。MEDACAは、そのような場合に役立つシンプルなカレンダーアプリです。

無料で使える日程調整ツール〜Cal.com〜
Cal.comは、Googleカレンダー等と連携して予定を管理したり、Web会議システムのURLを自動で発行することができるOSSの日程調整ツールです。この記事では、Cal.comの特徴や機能について紹介します。


