OSSのおすすめメーリングリストサーバ比較9選(2022年版)
メーリングリストは、登録されたメールアドレスにメールを一斉配布するための仕組みです。用途は様々で、メルマガの配信のように組織外へのメール配送で利用する場合もあれば、社内の部署やプロジェクトメンバー間での情報交換で利用する場合もあります。それぞれの利用シーンによって、必要となる機能も違ってきます。
ここでは、主な選定のポイントについて解説します。
メーリングリストソフトウェア
簡易メーリングリスト
メール業務管理ソフトウェア
メーリングリストサーバのソフトウェアの選定ポイント
メーリングリストの機能
メーリングリストサーバのソフトウェアの多くが、単純にメールを配布するだけでなく様々な付加機能を持っています。ここでは代表的なものを紹介します。
- +メールアーカイブ
- ★
メーリングリストで交換されたメールを、保管しておいて後から閲覧できるようにする機能です。メーリングリストに後から参加した人でも以前の議論が分かったり、後から検索するなどの目的で使われます。
- +ヘッダの書き換え
- ★
サブジェクトに、メーリングリスト特有の文字列を付けたり、メールの通番を付けたりする機能が一般的です。また、メーリングリストの種類や脱退方法をヘッダとして追加する機能を持ったものもあります。
- +Welcomeメール
- ★
メーリングリストに参加したときに、参加者にWelcomeメールを送る機能です。メーリングリストでのルールなどを配布するのに利用することができます。
- +迷惑メール対策機能
- ★
大量のメール送信や問題キーワードを自動的に検出して、メールを保留する機能です。
こうした機能は多ければ多いほど良いというわけではありません。余分な機能があると、設定項目が多くなり管理し難くなってしまうからです。単にメールを配布するだけであれば、シンプルなソフトウェアを選ぶ方がずっと管理はしやすくなります。そのため、本当に必要な機能は何かをよく考えて、それに適したソフトウェアを選択します。
メーリングリスト管理とユーザ管理
メーリングリストの新設、参加するユーザの管理などを、どのように行うかということは非常に重要です。
- +メールでの管理
- ★
メーリングリストサーバに、指示メールを送ることで管理する方法です。かなり以前はよく使われていましたが、最近はあまり利用しなくなっていると思います。
- +コマンドでの管理
- ★
メーリングリストサーバで、コマンドラインで管理する方法です。この方法しかサポートしていないソフトウェアも少なくありません。
- +WEB GUIからの管理
- ★
最近はGUIから管理できるソフトウェアが増えてきました。ただし、GUIではあっても必ずしも簡単とは言いきれません。日本語化されていなかったり、メーリングリストの専門用語が大量に使われていたりする場合もあります。特にGUIで、すべての設定値が表示されると、どうしてよいか分からない場合があります。
GUIから管理する場合には、高機能なソフトウェアよりも、シンプルなソフトウェアがおすすめです。 - +LDAPやActiveDirectoryとの連携
- ★
組織内で利用する場合に、意外と便利なのがLDAPやActiveDirectoryとの連携機能です。管理GUIへのログインやアーカイブの閲覧などで、既存のActiveDirectoryアカウントと連携できると、パスワード管理などが不要になり便利です。また、組織内の連絡でメーリングリストを使う場合には、LDAPデータベースからユーザを選択することができると、管理者は非常に助かります。
- +メールアドレスとの重複チェック
- ★
ユーザのメールアドレスとメーリングリストアドレスが重複するとこれまで届いていたメールが届かなくなるなどの問題が発生することがあります。メールアドレスとの重複チェックの機能が付いていると、このようなトラブルがなく、安心してメーリングリストを管理することができます。
- +マルチドメイン対応
- ★
マルチドメインの機能がないソフトウェアでは、複数のドメインに対応するにはドメイン毎にメーリングリストサーバを作る必要があります。すると、システム構成が複雑になってしまいます。しかし、マルチドメインに対応したメーリングリストソフトウェアを利用すればシンプルにシステムを構成することができます。
サポート
特に機能の多いメーリングリストの場合には、サポートも非常に重要です。最近は、迷惑メール対策機能などが原因でメールが届かないなどのトラブルも良くあります。構築をベンダーに依頼する場合には、こうした場合にサポートが受けられるかどうかを確認しておくと良いでしょう。
性能と拡張性
メーリングリストサーバのソフトウェアでは、一般的に機能が単純なものほど性能が高い傾向があります。特に、アーカイブ機能を利用する場合には、性能についての注意が必要です。アーカイブ機能を持つメーリングリストサーバのソフトウェアでは、記事を読みやすくするためにメールをスレッド表示するようにしているソフトウェアがほとんどです。そのため、メールが届くと関連するスレッドを検索し、適切なスレッドと結びつける必要があります。私たちの経験上、この処理は非常にディスク負荷が高く、メーリングリストサーバの性能に大きな影響を与えます。
メールには、それほどのリアルタイム性は要求されません。ですが、たくさんのメールが集中するメーリングリストサーバでは、慢性的にメールの配送が遅延するなどの問題が発生することがあります。そのため、アーカイブの取得が必要かは、導入検討にあたって考慮しておく必要があります。
また、配送の遅延が発生するような負荷が発生した場合には、メーリングリストサーバを複数のサーバに分けたりする必要があります。ただ、一般的にはそれに対応したサーバソフトウェアはほとんどありませんので、システムの設計者が、様々な工夫で対処することになります。
メーリングリストソフトウェア
Mailman2
GNUプロジェクトが開発しているメーリングリストサーバのソフトウェアです。RedHat Enterprise Linux、CentOS、Ubuntu、debianなどの各種Linuxディストリビューションでは、標準でパッケージ提供されていて、もっともよく使われているメーリングリストサーバであると言えます。メーリングリストの購読者は、Webインタフェースからメーリングリストの登録や脱退をしたり、アーカイブを閲覧することができます。また、管理者もWebインタフェースから設定・管理を行うことができます。ヘッダの書き換え、迷惑メール対策、添付ファイルのフィルターなど、メーリングリストで必要になる、ほとんどすべての機能を利用することができます。
非常に高機能なメーリングリストソフトウェアですが、残念ながらLDAPやActiveDirectoryとの連携はできません。メールアドレスの重複チェック、マルチドメインにも対応していません。また、管理者は豊富な機能のどれを利用するのかを適切に判断する必要があります。Webインタフェースは日本語対応していますが、日本語の品質は低く、専門用語も多く使われています。そのため、管理の難易度が高くなってしまっています。
企業が利用する場合、どのメーリングリストでも設定はほとんど同じです。そのため、デージーネットでオリジナルの登録・管理画面を作成した事例もあります。
Mailman3
Mailman 3はMailman suiteとも呼ばれており、Mailman core、HyperKitty、Postorius(ウェブUI)等の複数のコンポーネントで構成されています。Mailman 2では実装されていなかったマルチドメインの対応や、REST APIの使用が可能となりました。ただし、メールアドレスの重複チェックには対応していません。また、日本語での利用については、文字コードによってはメールの内容が文字化けしたり、受信できずエラーメールが返送されたりと、まだ完全ではありません。場合によっては、メールの配送やアーカイブが行なわれず、エラーメールの返送もされないという状態になってしまうため、デージーネットでは利用を推奨していません。
Sympa
Sympaは、非常に高機能なメーリングリストサーバのソフトウェアです。Webインタフェースから、メーリングリストの管理やアーカイブの参照、共有文書の管理などを行うことができます。また、マルチドメインに対応しており、ドメインごとに管理者を分けて管理することもできます。RDBやLDAPサーバをバックエンドに利用することで、高速に動作します。そのため、拡張性が高く、ユーザ数の多い環境や、メール数の多い環境での利用も可能です。
DAPやActiveDirectoryと連携することで、ユーザ認証を統合したり、メーリングリストの購読者の登録で利用することができるのも大きなメリットです。また、メールアドレスの重複チェック、マルチドメインにも対応しています。
1995年から続いているソフトウェアですが、現在も活発にバージョンアップが行われています。また、品質は安定しています。ただし、Mailman2のようにパッケージディストリビュータのサポートを受けることはできません。そのため、コミュニティとの連絡を取りながらサポートを行っていく必要があります。
ezmlm
ezmlmは、qmailの作者として有名なダニエル・J・バーンスタイン氏が開発したメーリングリストのソフトウェアです。極めて高速に動作し、セキュリティも高いと言われています。ただ、qmailとの連携を前提として作成されているため、他のMTAでは動作しないという問題があります。
ezmlmの特徴は、一般ユーザがメーリングリストを作成、管理できることです。ただし、管理は、メーリングリストサーバにログインし、専用コマンドを使って行う必要があります。GUIなどは用意されていませんので、利用者のハードルは決して低くありません。ezmlmは、機能的にも非常にシンプルですが、メッセージのアーカイブをサポートしています。また、必要に応じて、モデレータ(投稿を管理する人)を設置することもでき、モデレータが承認したメールだけがメーリングリストに流れるようにすることもできます。
fml
fmlは、日本で作られたメーリングリスト管理のソフトウェアです。1990年代から使われている非常に古いメーリングリストサーバのソフトウェアですが、現在もメンテナンスが行われています。当初にリリースされたfml4が、非常に人気があり、現在でも利用されています。国産のソフトウェアということもあり、日本語メールへの対応がしっかり行われています。日本語の技術情報が非常に多いのも特徴です。
一方、2001年にリリースされたfml8は、いまだにβ版であると書かれています。そのため、最近では徐々に人気を落とし、他のメーリングリストサーバへ移行されていることが多いようです。PGPを使用したメールの暗号化および認証機能をサポートしているのが特徴です。また、メールの配信メンバーとメールの投稿メンバーを別々に管理できます。コマンドやWEBインタフェースだけでなく、管理者から送られるメールでメンバーの管理を行うことができます。
majordomo
1992年から利用されているメーリングリストのソフトウェアです。Webサーバが一般化する前に作られたこともあり、メーリングリストへの加入、脱退などの操作を、メールで行うのが特徴です。Webインタフェースから管理するフロントエンド(MajorCool)も公開されています。一般的には以前の形式のまま利用されることが多いようです。例えば、メーリングリストを新設する時には、MTAのエイリアスファイルに設定を行います。そして、メンバーの登録はメールで操作します。
LISTSERV
1986年に発表されたメーリングリストのソフトウェアで、最も古いメーリングリストサーバのソフトウェアだと言われています。現在でも、インターネット上の大規模なメーリングリストで利用されている例が多数あります。LISTSERVでは、majordomoなどと同様に、メールでコマンドを送って管理を行うことができます。当初は、いわゆるフリーソフトウェアでしたが、現在はL-Soft社の製品として販売されています。ホビーユースのための非商用利用のためのライセンスが用意されていますすが、通常の利用では有償版を購入する必要があります。LinuxやUnixだけでなく、Windowsにも対応しているのが特徴ですが、日本語化は行われていません。
簡易メーリングリストソフト
postLDAPadmin
postLDAPadminは、デージーネットが開発・管理しているOSSのメール管理ソフトウェアです。基本的には、メールユーザ管理を行うためのWEB GUIですが、メーリングリストを作成することもできます。ただし、メールのアーカイブやヘッダの修正などの機能はなく、単に複数人にメールを配布できるだけです。機能は非常に簡便ですが、LDAPに対応して動作するため拡張性が高いのが特徴です。
メール業務管理ソフトウェア
CuMAS
CuMASは、デージーネットが開発・管理しているOSSのメール業務管理ソフトウェアです。顧客から送られてきた問い合わせ等のメールを自動的にデータベースに蓄積し、ステータスを管理することができます。問い合わせで交換されたメールは、件名毎にアーカイブされ保管されます。