オープンソース

OSSのおすすめメーリングリストサーバ比較9選(2024年版)

メーリングリストは、登録されたメールアドレスにメールを一斉配布するための仕組みです。メールマガジンの配信などで組織外へメール配送する場合や、ヘルプデスクなどの問い合わせ窓口としてメールを受信する場合、社内の部署やプロジェクトメンバー間の情報交換で利用する場合など、用途は様々です。ここでは、ライセンスフリーで利用できる、オープンソースのメーリングリストソフトウェアについて紹介します。また、メーリングリストサーバを選定する際のポイントについても解説します。

メーリングリストサーバをOSSで導入するメリット

メーリングリスト機能を持ったメールサーバを導入する際、Google WorkspaceやMicrosoft365などのクラウドサービスを利用する方法と、自社内でサーバやデータベースなどを構築し、独自のシステムを運用する方法の2つから選ぶことができます。それぞれにメリット・デメリットがある中で、以下では、オープンソースソフトウェア(OSS)を使って自社専用のメールサーバを構築する場合のメリットについて紹介します。

セキュリティの強化

クラウドサービスでメーリングリストサーバを運用する場合、セキュリティレベルは運営元のベンダー企業に依存することになります。メーリングリストを使った社内の情報共有では、社外秘の機密情報や重要情報を扱うことも多く、万が一情報漏えいが発生すると、甚大な被害をもたらす事故に発展することが想定されます。

一方、OSSを使えばオンプレミス環境に専用サーバを構築することができるため、自社独自のセキュリティポリシーに沿ってメールシステムを運用することができます。メールの情報も社内のサーバ上に保存されるため、安全にメールをやり取りすることができます。

アカウント数やコストを気にせず利用できる

一般的なクラウドサービスでは、アカウント数やメールの通数によって料金が変わる従量課金制をとっているものが多いです。社内の部署やプロジェクトごとにメーリングリストを利用する場合、アカウント数やメール送受信の数が増えると多大なコストがかかってしまうため、気軽に使いにくく、円滑な情報共有の妨げになってしまいます。

一方、OSSはライセンスフリーで利用可能なため、アカウント数やメッセージの容量を気にすることなく利用することができます。

なお、用途や利用環境によってはクラウドサービスの方が適している場合もあります。そのため、自社に合った最適なメーリングリストサーバを事前によく検討することが大切です。

メーリングリストソフトウェア

以下では、OSSのメーリングリストソフトウェアを紹介します。

Mailman2

Mailman2のソフトウェア画像

Mailman2は、GNUプロジェクトが開発しているメーリングリストサーバのソフトウェアです。RedHat Enterprise Linux、Ubuntu、debianなどの各種Linuxディストリビューションでは、標準でパッケージ提供されていて、もっともよく使われているメーリングリストサーバであると言えます。ただし現在は、Mailman 2にかわり、後述するMailman 3がMailmanの新バージョンとしてリリースされています。

Mailman2の特徴

  • メーリングリストの購読者は、Webインタフェースからメーリングリストの登録や脱退をしたり、アーカイブを閲覧することができます。
  • 管理者もWebインタフェースから設定・管理を行うことができます。
  • ヘッダの書き換え、迷惑メール対策、添付ファイルのフィルターなど、メーリングリストで必要になる、ほとんどすべての機能を利用することができます。

注意点

  • Mailman2の開発は終了し、後継のMailman3が新バージョンとしてリリースされています。
  • LDAPやActiveDirectoryとの連携はできません。
  • メールアドレスの重複チェック、マルチドメインに対応していません。
  • 機能が豊富なため、管理者はどの機能を利用するのかを適切に判断する必要があります。
  • Webインタフェースは日本語対応していますが、日本語の品質は低いです。専門用語も多く使われているため、管理の難易度が高いという問題があります。

なお、企業が利用する場合、どのメーリングリストでも設定はほとんど同じです。そのため、デージーネットでオリジナルの登録・管理画面を作成した事例もあります。

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Mailman3

Mailman3の画像

Mailman 3はMailman suiteとも呼ばれており、Mailman core、HyperKitty、Postorius(ウェブUI)等の複数のコンポーネントで構成されています。

Mailman3の特徴

  • Mailman 2では実装されていなかったマルチドメイン対応、REST APIの使用が可能です。
  • メール経路上の過去の送信ドメイン認証の検査結果を履歴として保持するARC(Authenticated Received Chain)の技術に対応しています。

注意点

  • コマンドラインによる設定が多いです。
  • メールアドレスの重複チェックには対応していません。
  • 日本語での利用については、文字コードによってメールの内容が文字化けしたり、受信できずエラーメールが返送されたりと、完全ではありません。場合によっては、メールの配送やアーカイブが行なわれず、エラーメールの返送もされないという状態になります。

デージーネットでは、Mailman3を日本語対応可能にするための修正プログラムを開発しました。これによりMailman3を日本語環境でも利用できるようになっています。

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Sympa

Sympaのソフトウェア画像

Sympaは、非常に高機能なメーリングリストサーバのソフトウェアです。GPLv2で公開されています。1995年から続いているソフトウェアですが、現在も活発にバージョンアップが行われており、品質も安定しています。

Sympaの特徴

  • Webインタフェースから、メーリングリストの管理やアーカイブの参照、共有文書の管理などを行うことができます。
  • RDBやLDAPサーバをバックエンドに利用することで、高速に動作します。
  • 拡張性が高く、ユーザ数の多い環境やメール数の多い環境で利用できます。
  • LDAPやActiveDirectoryと連携することで、ユーザ認証を統合したり、メーリングリストの購読者の登録として利用することができます。
  • マルチドメインに対応しており、ドメインごとに管理者を分けて管理することができます。
  • DKIM署名/ARC署名に対応しています。

注意点

  • Mailmanからメーリングリストやメンバーを移行する機能はありません。
  • ディスク性能によりますが、メールの保管庫に大量にメールが貯まると、検索機能が遅くなったり、動かなくなったりする可能性があります。
  • Mailman2のように、パッケージディストリビュータのサポートを受けることはできないため、コミュニティとの連絡を取りながらサポートを行っていく必要があります。

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fml

fmlは、日本で作られたメーリングリスト管理のソフトウェアです。1990年代から使われている非常に古いメーリングリストサーバのソフトウェアですが、現在もメンテナンスが行われています。当初にリリースされたfml4が、非常に人気があり、現在でも利用されています。

fmlの特徴

  • 国産のソフトウェアということもあり、日本語メールへの対応がしっかり行われています。日本語の技術情報も非常に多いです。
  • PGPを使用したメールの暗号化および認証機能をサポートしています。
  • メールの配信メンバーとメールの投稿メンバーを別々に管理できます。
  • コマンドやWEBインタフェースだけでなく、管理者から送られるメールでメンバーの管理を行うことができます。

注意点

  • 2001年にリリースされたfml8は、いまだにβ版であると書かれています。

上記の課題から、最近では徐々に人気を落とし、他のメーリングリストサーバへ移行されていることが多いようです。

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ezmlm

ezmlmは、qmailの作者として有名なダニエル・J・バーンスタイン氏が開発したメーリングリストのソフトウェアです。極めて高速に動作し、セキュリティも高いと言われています。

ezmlmの特徴

  • 一般ユーザがメーリングリストを作成・管理できます。
  • 機能的には非常にシンプルですが、メッセージのアーカイブをサポートしています。
  • 必要に応じて、モデレータ(投稿を管理する人)を設置することもできます。モデレータが承認したメールだけがメーリングリストに流れるようにすることもできます。

注意点

  • qmailとの連携を前提として作成されているため、他のMTAでは動作しません。
  • 管理用GUIなどは用意されていないため、メーリングリストサーバにログインし、専用コマンドを使って管理を行う必要があります。

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majordomo

majordomoは、1992年から利用されているメーリングリストのソフトウェアです。

majordomoの特徴

  • Webサーバが一般化する前に作られたこともあり、メーリングリストへの加入、脱退などの操作を、メールで行います。一般的には以前の形式のまま利用されることが多いようです。例えば、メーリングリストを新設する時は、MTAのエイリアスファイルに設定を行い、メンバーの登録はメールで操作します。
  • Webインタフェースから管理するフロントエンド(MajorCool)も公開されています。

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LISTSERV

1986年に発表されたメーリングリストのソフトウェアで、最も古いメーリングリストサーバのソフトウェアだと言われています。現在でも、インターネット上の大規模なメーリングリストで利用されている例が多数あります。当初は、いわゆるフリーソフトウェアでしたが、現在はL-Soft社の製品として販売されています。

LISTSERVの特徴

  • majordomoなどと同様に、メールでコマンドを送って管理を行うことができます。
  • LinuxやUnixだけでなく、Windowsにも対応しています。

注意点

  • ホビーユースのための非商用利用のためのライセンスが用意されていますが、通常の利用では有償版を購入する必要があります。
  • 日本語化は行われていません。

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簡易メーリングリストソフト

以下では、簡易的にメーリングリストを使いたい場合に適したOSSを紹介します。

postLDAPadmin

簡易メーリングリストソフトの画像

postLDAPadminは、デージーネットが開発・管理しているOSSのメール管理ソフトウェアです。基本的には、メールユーザ管理を行うためのWEB GUIですが、メーリングリストを作成することもできます。ただし、メールのアーカイブやヘッダの修正などの機能はなく、単に複数人にメールを配布できるだけです。機能は非常に簡便ですが、LDAPに対応して動作するため拡張性が高いのが特徴です。

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メール業務管理ソフトウェア

以下では、メールを使って業務のやり取りを行う際に便利なOSSを紹介します。

CuMAS

メール業務管理ソフトウェア画像

CuMASは、デージーネットが開発・管理しているOSSのメール業務管理ソフトウェアです。顧客から送られてきた問い合わせ等のメールを自動的にデータベースに蓄積し、ステータスを管理することができます。問い合わせで交換されたメールは、件名毎にアーカイブされ保管されます。

CuMAS構築事例 CuMAS詳細情報 問い合わせ

メーリングリストサーバのソフトウェアの選定ポイント

以下では、メーリングリストサーバのソフトウェアを選ぶ際のポイントを解説します。

メーリングリストの機能

メーリングリストサーバのソフトウェアの多くが、単純にメールを配布するだけでなく様々な付加機能を持っています。ここでは代表的なものを紹介します。

メールアーカイブ

メーリングリストで交換されたメールを、保管しておいて後から閲覧できるようにする機能です。メーリングリストに後から参加した人でも以前の議論が分かったり、後から検索するなどの目的で使われます。

ヘッダの書き換え

サブジェクトに、メーリングリスト特有の文字列を付けたり、メールの通番を付けたりする機能が一般的です。また、メーリングリストの種類や脱退方法をヘッダとして追加する機能を持ったものもあります。

Welcomeメール

メーリングリストに参加したときに、参加者にWelcomeメールを送る機能です。メーリングリストでのルールなどを配布するのに利用することができます。

セキュリティ対策機能

大量のメール送信や問題キーワードを自動的に検出して、メールを保留する機能などがあります。また、送信者を偽装した「なりすましメール」対策として、送信ドメイン認証に対応しているかどうかも重要なポイントです。

こうした機能は多ければ多いほど良いというわけではありません。余分な機能があると、設定項目が多くなり管理し難くなってしまうからです。単にメールを配布するだけであれば、シンプルなソフトウェアを選ぶ方がずっと管理はしやすくなります。そのため、本当に必要な機能は何かをよく考えて、それに適したソフトウェアを選択します。

メーリングリスト管理とユーザ管理

メーリングリストの新設、参加するユーザの管理などを、どのように行うかということは非常に重要です。

メールでの管理

メーリングリストサーバに、指示メールを送ることで管理する方法です。以前はよく使われていましたが、最近はあまり利用されなくなっています。

コマンドでの管理

メーリングリストサーバで、コマンドラインで管理する方法です。この方法しかサポートしていないソフトウェアも少なくありません。

WEB GUIからの管理

最近はGUIから設定・管理できるソフトウェアが増えてきています。ただし、GUIであっても必ずしも簡単とは言いきれません。画面が日本語化されていなかったり、メーリングリストの専門用語が大量に使われていたりする場合もあります。特にGUIで、すべての設定値が表示されると、どうしてよいか分からない場合があります。GUIから管理する場合には、高機能なソフトウェアよりも、シンプルなソフトウェアがおすすめです。

LDAPやActiveDirectoryとの連携

組織内で利用する場合に便利なのがLDAPActiveDirectoryとの連携機能です。管理GUIへのログインやアーカイブの閲覧などで、既存のActiveDirectoryアカウントと連携できると、パスワード管理などが不要になり非常に便利です。また、組織内の連絡でメーリングリストを使う場合には、LDAPデータベースからユーザを選択することができると、管理者の手間を省くことができます。

メールアドレスとの重複チェック

ユーザのメールアドレスとメーリングリストアドレスが重複するとこれまで届いていたメールが届かなくなるなどの問題が発生することがあります。メールアドレスとの重複チェックの機能が付いていると、このようなトラブルがなく、安心してメーリングリストを管理することができます。

マルチドメイン対応

マルチドメインの機能がないソフトウェアでは、複数のドメインに対応するために、ドメイン毎にメーリングリストサーバを作る必要があります。これにより、システム構成が複雑になってしまいます。マルチドメインに対応したメーリングリストソフトウェアを利用すれば、シンプルにシステムを構成することができます。

サポート

特に機能の多いメーリングリストの場合には、サポートも非常に重要です。最近は、迷惑メール対策機能などが原因でメールが届かないなどのトラブルもよくあります。製品のソフトウェアと異なり、OSSは開発元のサポートを受けられないことが多いです。そのため、ベンダーに構築を依頼する場合には、トラブルが起きた際にサポートが受けられるかどうかを確認しておくと良いでしょう。なお、デージーネットが提供するサポートでは、パッケージの提供、Q&A、動作上のバグが認められた場合の対応などを行っています。

性能と拡張性

メーリングリストサーバのソフトウェアでは、一般的に機能が単純なものほど性能が高い傾向があります。特に、アーカイブ機能を利用する場合には、性能についての注意が必要です。アーカイブ機能を持つメーリングリストサーバのソフトウェアでは、記事を読みやすくするためにメールをスレッド表示するようにしているソフトウェアがほとんどです。そのため、メールが届くと関連するスレッドを検索し、適切なスレッドと結びつける必要があります。私たちの経験上、この処理は非常にディスク負荷が高く、メーリングリストサーバの性能に大きな影響を与えます。

メールには、それほどのリアルタイム性は要求されません。ですが、たくさんのメールが集中するメーリングリストサーバでは、慢性的にメールの配送が遅延するなどの問題が発生することがあります。そのため、アーカイブの取得が必要かは、導入検討にあたって考慮しておく必要があります。

また、配送の遅延が発生するような負荷が発生した場合には、メーリングリストサーバを複数のサーバに分けたりする必要があります。ただ、一般的にはそれに対応したサーバソフトウェアはほとんどありませんので、システムの設計者が、様々な工夫で対処することになります。

デージーネットの取り組み

デージーネットでは、インターネットサービスプロバイダ用のシステム構築などで、OSSを利用したメールシステムの構築やサポートの実績を数多く持っています。こうした経験を生かし、お客様の用途や利用環境に合わせて、最適なソリューションを提案しています。構築・導入のコンサルティングやシステム構築サービス、構築後に安心してお使い頂くためのサポートやメンテナンスのサービスなどを行っています。

導入後のサポートでは、システム全体のサポ―トを行います。Q&A対応やインストールしたOSSやソフトウェアに対するセキュリティ情報を提供し、障害の発生時に障害の回避、原因の調査を行います。必要な場合には、OSSソースコードレベルの調査やOSSコミュニティとの連携なども行います。システムの導入をご検討の方向けに無料の見積も実施しておりますので、お気軽にご相談ください。