ナレッジマネジメントとは
ナレッジマネジメント(knowledge management)とは、個人の知識やノウハウを組織の中で共有・活用することで、業務の効率化や知識資産を向上させ、特定の担当者に依存しない経営手法のことである。
ナレッジの種類
ナレッジはそれぞれ暗黙知・形式知と2つの種類に分けることができる。
形式知
「形式知」とは、業務の内容や作業手順、製品の詳細の情報などを、言葉・文章・図・グラフなどで適切に表現できる”見える知識”を表す。業務の内容や作業手順、製品の詳細の情報等は、共通のナレッジであり、データとして正確な数字や図による根拠があるため、他の者がみても理解できる。そのため、ナレッジマネジメントとして取り込むには、共有しやすいものである。
暗黙知
「暗黙知」とは、職人の長年の経験による豊富で熟練された技術や、ベテラン社員の顧客のニーズを引き出すノウハウ・営業のコツ、顧客の独特な特徴など、長年培われてきた「勘」や「感覚」というマニュアルや言語で表現できない"見えない知識"を表す。「勘」や「感覚」といった他の社員が理解するのは難しい暗黙知したナレッジを、他の社員にも共有することによって、ナレッジマネジメントをより発展させていくことが可能である。
暗黙知の共有には「対話」や「観察」、「共同作業」といったプロセスが必要である。この過程でコミュニケーションが活性化し、チーム内の関係性が強化されるが、実際に実現することが難しい点があるといえる。
暗黙知が共有されづらい原因
暗黙知が共有されづらい原因として、以下のようなことがある。
- 社員同士で共有する場が設けられていなかったり、仕組みそのものがなかったりする
- 個人の感覚的なものを共有することに抵抗がある
- 共有することが評価には繋がらない
- 日々の業務に追われているため、共有する時間や精神面において余裕がない
- チーム内の信頼関係が薄い
- 表立って共有することに対しての理解が十分ではない
- 信頼関係が築けていないことによるコミュニケーション不足
上記のような原因から、ナレッジマネジメントを実践する以前に、職場内の環境づくりやナレッジマネジメントを行うにあたっての意味や理解を深める場を設け協力を促したり、評価体制の仕組みづくりをしたりといった、会社の現場から改善することも必要である。
そして、暗黙知が共有されやすくなることによって、各個人が、他人事から自分事としてナレッジを積極的に共有してくれるようになることが見込める。
ナレッジマネジメントはなぜ企業に必要なのか
ナレッジマネジメントが企業に必要な理由として、次のようなことがある。
- 昨今のコロナ禍によってテレワークが普及し多様な働き方が普及したことで、社員同士のコミュニケーションが減りつつある。したがって、様々な社員のナレッジが共有されにくく、知識の共有方法を見直すことが必要なため。
- 近年、少子高齢化が進み、労働者人口が減りつつあり、一人ひとりの生産性を高めていくことが必要である。したがって社内外のナレッジを共有することによって、業務効率化や生産性の向上を実現する必要があるため。
ナレッジマネジメントのメリット
以下では、企業にナレッジマネジメントを取り入れた際のメリットを紹介する。
業務効率化、生産性の向上が期待できる
ナレッジマネジメントを行うことにより、業務を口頭で説明する手間を省くことができる。そのためシステムを閲覧するだけで業務内容を把握できたり、優秀な社員のノウハウや知識が共有されやすくなったりする。これにより、社員のスキルアップや業務効率化、生産性の向上、業務の標準化が見込める。
業務の属人化を防げる
昨今の人材の流動化に伴い、特定の担当者に依存してしまうと、担当者が抜けた場合、一定の業務が滞ってしまう。そのため、業務をマニュアル化し誰でもわかりやすくすることで、担当者が抜けてしまってもマニュアルの手順を見て業務を遂行することが可能になる。また、担当者の負担も減り、他の社員でもカバーすることができるので組織内のスキルも向上し、効率化も見込める。そのため、昨今の社会問題である育児休暇や社員の急病など、一定の期間、社員が減ってしまう場合においてもリスクヘッジすることができる。
企業の知的資産になる
社内wikiやナレッジマネジメントシステムで独自の知識やノウハウ、業務の手順、マニュアルを管理することは、企業の知的資産となりうる。
他部署、他店との連携強化
ナレッジマネジメントにより他部署・他店にもマニュアルを共有することで、各種問い合わせにも対応でき、マニュアルを参考にしてさらに新しいナレッジを生み出すこともできる。また、他店で苦情やトラブルが発生した時に、それに対してどう改善したのかが共有されていれば、未然に苦情やトラブルを防ぐことができ、顧客に対して適切な対応を行うことができる。
問題解決のスピードが向上する
ナレッジマネジメントにより、社内外の情報を確認することができる。したがって関連する担当者をすぐに把握でき、過去の事例から解決策を見出すことが可能となるため、問題解決のスピードと質の向上が見込める。
人材育成・教育に役立つ
例えば、各々の営業のコツや業務をマニュアル化すると、採用後の社員教育・OJTを効率的に進めることができる。そして判断に迷ったり不明点があったりする場合は、ナレッジをみて業務を遂行することができる。また、形式知化したナレッジから実際に行動することにより、新たな経験・知識・ノウハウなどといった暗黙知を生み出すことができる。
ナレッジマネジメントのデメリット
以下では、企業にナレッジマネジメントを取り入れた際のデメリットを紹介する。
情報の管理に手間がかかる
ナレッジの情報を整理していないと、社員がナレッジを探すのに手間がかかってしまう。そのため、情報別にカテゴリーを分けたり、それに追随してフォーマットの作成も必要である。また、情報が更新されていない、情報自体が存在しない、情報が古く信用性が欠けているなどの可能性も考えられる。そのため、随時確認を行う手間がかかる。
社員がナレッジを共有しない
本来の業務で忙しく、社内wikiやナレッジマネジメントシステムに情報を共有する時間がないため、中々情報が更新されない場合がある。また、社員が独自で持っている知識やノウハウがあまり重要ではないと思い込んでいるため、共有されない可能性がある。
導入コストや時間がかかる
ナレッジマネジメントシステムによっては高い導入コストがかかる場合もある。また、導入しても詳細の設定や、社員が情報を載せるために長期の時間が必要になってくるため、すぐには運用できない。
管理者が必要
社員は本来の業務があり、進んでシステムに情報を載せる時間がないことが想定される。そのため、社員全体の意識を向上させるために、別に管理者をたて、何か困難や問題があった場合に具体的な対策・施策を立てたり、ナレッジを整理したりするなど、ナレッジマネジメントシステムを有効で効果的なシステムへと推進させていく必要がある。
ナレッジマネジメントを実践する方法
以下では、ナレッジマネジメントを実践する方法を紹介する。
目的の設定をする
漠然とナレッジマネジメントを実行しても、簡単には運用できない。まずは、社員になぜナレッジマネジメントを実行するのか明確にすることで、社員全体の意識をあげる必要がある。ポイントとしては、ナレッジマネジメントを実行するにあたっての社員・組織・チーム全体のメリットや、どのような目標を目指していくのか等、具体的に提示する必要がある。
システムを導入する
ナレッジはExcelやファイル、紙でまとめるのではなく、社内wikiやナレッジマネジメントシステムを利用することで社員がより使いやすくなり、管理者の負担が少なくなる。そしてナレッジマネジメントシステムを導入することで、社員がいつでもどこでもナレッジを確認することができる。ただしナレッジは会社の重要情報にもなりうるため、システムを検討するにあたっては、セキュリティが十分なものを選ぶ必要がある。
共有すべきナレッジを収集する
管理者はどのようなナレッジをあげていくのか分析し、決定する。それを踏まえ、社員が情報を共有し、システムを更新してもらう。
随時、見直し・改善を行う
長年培われた情報は古くなっていくため、社員全体で見直しをし、常に最新の情報を載せるように改善する。また、蓄積されたナレッジを元に新たな発想が生まれ、商品・サービス・顧客対応の改善や新規事業が生まれる可能性がある。
デージーネットの取り組み
デージーネットでは、自社内でWiki.jsというOSSのツールを使ってナレッジ共有することでナレッジマネジメントを運用している。Wiki.jsとは、Webブラウザ上で不特定多数のユーザがコンテンツを編集し、ノウハウの情報共有を円滑に進めるためのシステムである。OSSの社内wikiツールを使うことで、クラウドサービスなどに比べて運用コストを抑えることができる可能性があるため、お客様に対しても社内Wikiツールの構築や提案を行っている。
またデージーネットでは、Wiki.jsのインストール方法や使い方、詳しい機能などを調査し、調査報告書に掲載している。調査報告書は無料でダウンロードすることが可能である。
【カテゴリ】:情報共有  
【Webセミナー】Excel管理からの解放!OSSで始める資産管理Snipe-IT導入セミナー
日程: | 8月6日(水)Webセミナー「BigBlueButton」を使用します。 |
内容: | 社内のPC機器やソフトウェア、ライセンス、オフィス用品をどのように管理していますか? |
ご興味のあるかたはぜひご参加ください。 |