VMwareからoVirtへ移行した仮想基盤の構築事例
ソリューション開発部 上野 貴博
今回は、製造業のお客様に、oVirtを使った仮想基盤を構築した事例です。お客様の現行システムではVMware製品を利用していましたが、価格高騰によるコスト増加が問題となっていました。同時に、運用操作の属人化やサーバのサポート切れも課題となっていたため、デージーネットからはVMwareからoVirtへ移行することをご提案しました。
お客様が悩まれていた課題
お客様には以下の課題がありました。
- VMwareの価格高騰により、仮想基盤の運用コストが大幅に増加していた
- 現行サーバの保守期限が迫っており、サポート延長もできない
- 他社が導入したメールシステムの継続運用に不安があった
デージーネットからの提案
デージーネットからは以下の3つを提案しました。
oVirtを使用したオープンソース仮想基盤への移行
oVirtは、商用製品と同等の機能性を持った、オープンソース仮想化プラットフォームです。サービスを停止させないための高可用性(以下、HA)クラスタ、ライブマイグレーション、テンプレート管理、Webベースの管理画面など、企業の仮想化ニーズに応える機能を無償で提供しています。セルフホストエンジン構成により管理サーバ自体も仮想化・冗長化可能で、コスト削減と高可用性を両立することができます。2023年に米国のBroadcom社がVMware社を買収し、VMware製品の価格が高騰したことから、その代替として今注目されているOSSです。
今回は、VMwareからoVirtへ移行することで、ライセンス費用の大幅削減を図りました。oVirtを使うことで、2台のホストサーバでHAクラスタを構成し、障害発生時の自動フェイルオーバーやライブマイグレーション機能を提供することができます。専用の管理サーバが不要な構成とすることで、ハードウェアコストの削減にもつながるようにしました。
NFSサーバのHAクラスタ構成による共有ストレージの冗長化
oVirtの共有ストレージとしてNFS(ファイル共有システム)を使用し、2台構成のHAクラスタで冗長化することをご提案しました。これは、単一障害点を排除し、システム全体の可用性を向上させるためです。これによりストレージ障害時でも、自動フェイルオーバーの機能により仮想マシンの稼働継続を実現することができます。
セルフホストエンジン構成による管理サーバの可用性向上
コスト削減と高可用性を両立させるため、oVirtの管理サーバ(oVirt Engine)を、oVirt自身が管理する仮想環境内に配置する構成をご提案しました。これにより、管理サーバ専用ハードウェアが不要となり、かつoVirtのHA機能により管理サーバ自体の可用性も確保することができます。
導入時の工夫
導入にあたって以下を工夫しました。
現行運用のヒアリングとマニュアル整備による移行後の運用負担軽減
長年VMwareで運用していた既存システムでは、ユーザ部門がどのような運用操作をしているかが属人化しており、操作内容が整理されていませんでした。そこで、今回の設計段階で現行の運用を詳細にヒアリングし、新システムで何が変わるかを一つずつ整理しました。移行後に戸惑わないよう、必要なポイントをマニュアル化し、運用負担の軽減と引継ぎしやすい状態を目指しました。
VMware特有の設定の棚卸と新環境での運用最適化
現システムには、設計意図が不明瞭なVMware特有のネットワーク設定やストレージ設定が多く含まれていました。こうした設定はトラブルの温床になる可能性があるため、設計フェーズで一つずつ棚卸を行い、oVirt環境では運用が分かりやすくなるように再整理しました。各ネットワークの役割と設定値を基本設計書に詳細に記載することで、構築後も属人化を防ぎ、誰でも管理しやすい状態を実現しました。
段階的な移行リハーサルによる本番切替リスクの最小化
仮想基盤だけでなく、メール(約350ユーザ)やDNS(約100ゾーン)の重要なサービスを移行するため、切替時のリスクが高いプロジェクトでした。現行サービスに影響しない範囲で段階的にリハーサルを繰り返し、データ移行手順の確認と作業時間の短縮を図りました。これにより、本番切替時のダウンタイムを最小化し、ユーザへの影響を抑えた安全なリプレースを実現しました。
導入後の結果
VMwareからoVirtへ移行したことにより、年間のライセンス費用を大幅に削減することができました。また、属人化していたシステムの運用を統一し、詳細な手順書を整備したことで、引継ぎやトラブル対応がスムーズになりました。さらに、サーバ保守期限切れというリスクも解消され、仮想基盤・ストレージの冗長化により、安定した運用を長期的に続けられる体制が整いました。
関連ページ
構築事例:oVirtを利用した仮想基盤(クラスタ)構築
oVirtを利用した仮想基盤を構築した事例を紹介します。お客様はVMwareの価格高騰により、仮想基盤の運用コストが大幅に増加していました。仮想基盤をVMwareからoVirtへ移行し、さらにクラスタ構成とすることで可用性の高いシステムを実現しました。
デージーネットからのお知らせ
RHEL10ついにリリース!Linuxユーザ必見の新機能・変更点徹底解説セミナーを開催します。
ついに2025年5月20日にRed Hat Enterprise Linux 10が公開されました。弊社ではいち早くRed Hat Enterprise Linux 10を調査し、Red Hat Enterprise Linux 9からの変更点や新機能をご紹介します。
- 日程:2025年7月23日(水)
- 時間:15:00〜16:00
詳細↓↓
https://www.designet.co.jp/seminar/seminar.php?seminar_id=111
Excel管理からの解放!OSSで始める資産管理Snipe-IT導入セミナーを開催します。
近年、IT化が進み企業の管理すべきIT資産は年々増加していますが、社内のPC機器やソフトウェア、ライセンス、オフィス用品をどのように管理していますか?このセミナーでは、社内の備品管理からIT機器の資産管理までを行うことができるOSSの資産管理システムSnipe-ITを紹介します。
- 2025年8月6日(水)
- 時間:15:00〜16:00
詳細↓↓
https://www.designet.co.jp/seminar/seminar.php?seminar_id=110
『社内研修のIT化』に関するアンケートの統計結果のプレスリリースが、J-CASTニュースに取り上げられました!
https://www.designet.co.jp/info/?id=820
『社内研修のIT化』に関するアンケートの統計結果のプレスリリースが、livedoorNewsに取り上げられました!
https://www.designet.co.jp/info/?id=819
『社内研修のIT化』に関するアンケートの統計結果のプレスリリースが、MSNに取り上げられました!
https://www.designet.co.jp/info/?id=818
メールサーバの安全性を無料でチェックできるサイトを公開しています。
メールセキュリティへの関心が高まる中、メールセキュリティのチェック項目を整理して、誰でも簡単にチェックできるツールはありませんでした。本サイトでは、メールアドレスを入力するだけで、メールサーバのセキュリティを無料でチェックできます。