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LDAPサーバ(slapd)の冗長化と拡張機能

LDAPサーバ(slapd)は、様々な用途で利用できるLDAPサーバです。停止が許されない環境や、非常に多数のアクセスがある環境でも利用できます。そのため、デージーネットでは、LDAPサーバ構築時には、必ず冗長化した構成を推奨しています。また、LDAPサーバ(slapd)には拡張APIが用意され、柔軟に機能を拡張することができます。ここでは、LDAPサーバ(slapd)のシステム構成や拡張APIについて解説します。

負荷分散構成と冗長化構成

LDAPは、認証やデータの管理を集中して行う用途で使われます。そのため、LDAPサーバが停止すると、様々なサービスが停止してしまう可能性があります。デージーネットでは、LDAPサーバを構築する場合には、必ずLDAPサーバを冗長化した構成を推奨しています。LDAPサーバの冗長化構成にはレベルによっていくつかの方法があります。ここでは、LDAPサーバの冗長化構成を3つ紹介します。

同期レプリケーション

同期アプリケーションイメージ

同期レプリケーションは、LDAPサーバ(slapd)が用意するLDAPデータ複製の仕組みです。複数のLDAPサーバのうち、一つをプロバイダ(マスタ)にします。他のLDAPサーバは、コンシューマとして、プロバイダからデータの複製を受けます。

この構成では、LDAPデータの更新はプロバイダに対して行う必要があります。プロバイダが停止しても、コンシューマを利用して認証サービスを継続することができます。ですが、LDAPデータの更新はできなくなります。

マルチマスタレプリケーション構成

マルチマスタレプリケーション構成イメージ

同期レプリケーションの特殊な形態で、複数台のプロバイダ(マスタ)サーバを配置する構成です。1つのプロバイダに対して行われた変更は、別のプロバイダに反映されます。そのため、一つのプロバイダが停止しても、LDAPデータの参照も更新も継続して行うことができます。

ただし、同時に複数のプロバイダへの更新を行うと、LDAPデータの不整合が発生する可能性があります。そのため、更新処理を行うLDAPサーバは常に1つにしておく必要があります。ロードバランサーの、フォールバック機能などと組み合わせて利用するのが一般的です。

HAクラスタ構成

HAクラスタ構成イメージ

同期レプリケーションで、LDAPデータの更新サーバが一台のプロバイダに限定されてしまう欠点を補うため、プロバイダをHAクラスタとして冗長化します。デージーネットでは、DRBDを使ってLDAPのデータをミラーリングし、Pacemaker、Corosyncなどを使ってLDAPサーバを冗長化する構成を推奨しています。

バックエンドとオーバーレイ

OpenLDAPのLDAPサーバには、バックエンドとオーバーレイの2つの拡張APIが用意されています。バックエンドは、LDAPのデータを管理するためのデータベースです。通常は、Berkeley DBを使ったbdb、hdbか、独自フォーマットのデータベースであるmdbを使います。しかし、mysqlなどのデータベースでLDAPデータを管理したり、別のLDAPサーバや、アプリケーションをバックエンドのデータベースとして利用することもできます。

オーバーレイは、データベースのフロントエンドとして働くAPIです。LDAPデータの複製や変換などを行うことができます。ここでは、よく使われるバックエンドとオーバーレイを紹介します。

syncprovオーバーレイとsyncreplオーバーレイ

syncprovとsyncreplは、同期レプリケーションの行うためのオーバーレイです。syncprovを有効にしたLDAPサーバは、同期プロバイダとして動作することができるようになります。また、syncreplを有効にしたLDAPサーバは、プロバイダーからデータを取得し、ローカルなデータベースに書き込みを行います。

relayオーバーレイ

relayオーバーレイは、通常のDITの複製を用意するオーバーレイです。例えば、ディレクトリツリーの形を変えたり、属性名を変換したりするために使われます。

metaバックエンド

metaバックエンドは、複数のActiveDirectoryやLDAPサーバを統合して、1つのディレクトリツリーを構成するためのバックエンドです。用途によって、複数のディレクトリサーバが混在している環境で利用します。

構築事例(OpenLDAP)

OpenLDAPによるLDAPサーバのマルチマスタ構成

OpenLDAPのミラーモードでLDAPサーバを二重化しました。認証システムの冗長構成が求められていましたが、冗長化ソフトウェアの導入はコスト面で問題がありました。OpenLDAPの柔軟性を活用し、OpenLDAP標準機能であるミラーモードを使う事で、特別な冗長化ソフトウェアを使わずに、認証システムを冗長化しました。

構築事例(OpenLDAPによるLDAPサーバのユーザ統合管理システム)

OpenLDAPによるLDAPサーバのユーザ統合管理システム

リモートアクセスの管理などで利用しているLDAPサーバをリプレースしました。これまで利用してきた製品から、OpenLDAPへ移行することでライセンス費用を抑え、代わりにサーバを冗長化することが可能となりました。

構築事例(LDAPサーバ冗長化)

LDAPサーバ冗長化

LDAPサーバをサービス無停止で提供するため、PacemakerとDRBDを利用したHAクラスタでLDAPクラスタを構築しました。

構築事例(389 Directory Server)

389 Directory Serverを利用したLDAPサーバ

ケーブルテレビの契約ユーザ向けのLDAPサーバのリプレースを行いました。これまで使用してきた389 Directory ServerからOpenLDAPへリプレースしようとしましたが、設定上、うまくいかないことがあり、新サーバでも389 Directory Serverを採用することになりました。旧389 Directory Serverで利用していたLDAPのデータもすべて移行しました。

関連情報

389 Directory Server〜OSSのLDAPサーバ〜

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389 Directory Server

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LDAPデータ管理のOSS比較

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