オンラインストレージとは
オンラインストレージとは、インターネットを経由してPCやスマートフォンなどのデバイスからアクセス可能なファイル共有サービスのことである。クラウドストレージとも呼ばれる。Dropbox、Google Drive、OneDrive、Evernote、iCloud Driveなどのサービスがある。
これらのサービスでは、ユーザに対して一定のディスク容量を貸出している。多くのオンラインストレージサービスには、1〜20Gb程度が無料で利用できる無料プランが設定されている。有料の会員になることで、より多くの容量を確保することができる。サービスによっては最大100Gb、500Gb、無制限など、かなりの大容量を低価格で提供する料金プランが存在する場合もある。
オンラインストレージの特徴
オンラインストレージには次のようなメリットがあり、広く普及している。
- データバックアップとして利用できる
スマートフォンの記憶容量が限られているため、スマートフォンで撮影した写真や音楽や動画などのデータを保存しておく場所として利用する人が多い。ほとんどのオンラインストレージサービスは、スマートフォン用の専用アプリを提供していて、簡単にデータをアップロードすることができる。
- データ共有ができる
オンラインストレージには、複数の人が同じデータを共有するための機能がある。この機能を利用することで、写真やドキュメントなどを気軽に共有することができる。共有には2つの方法がある。1つは、共有したいユーザアカウントを指定して、指定した相手だけに共有する方法である。もう1つは、共有用のURL(リンク)を発行する方法である。この方法は、ユーザは登録不要で、より広い相手に共有することができる。URLリンク型の場合には、ワンタイムパスワードや有効期限を設定できるのが一般的で、ある程度の安全性を確保することができる。
- データ交換用に利用できる
大容量のデータをメールなどで送ろうとすると、容量制限があり困ることがある。このような場合に、オンラインストレージにデータを配置し、共有用のURL(リンク)を相手に送付する。宅ふぁいる便など、メールでのデータ交換に特化したオンラインストレージサービスもある。
- 複数のデバイスでファイルを共有できる
オンラインストレージにファイルを配置しておくことで、スマートフォン、PC、タブレットのような複数のデバイスでファイルや設定を共有することができる。AppleのiCloud Driveサービスが代表的である。
- 外出先で手軽にファイルを利用できる
企業内や自宅内のファイルサーバにあるデータを外出先から使うことは難しい。しかし、オンラインストレージにデータを置いておけば、どこからでもデータを利用できる。例えば、プレゼンテーション資料をオンラインストレージに配置して、オンラインカタログのように利用することができる。また、実際に仕事で利用するファイルをオンラインストレージに配置しておけば、リモートワークなどもしやすくなる。多くのサービスでは、オンラインストレージ上の画像、テキスト、Microsoft Office文書などをブラウザ上のWeb画面からの操作で閲覧、作成、編集できる機能を提供している。
- ファイルの履歴を管理できる
オンラインストレージには、ファイルの履歴管理をサポートしているサービスが多い。企業内のファイルサーバよりも便利に使える場合もある。
オンラインストレージとファイルの同期
オンラインストレージサービスの多くが、スマートフォンやPC向けに専用のアプリケーションを配布している。これらのアプリケーションは、ファイルの自動同期機能を持っているものが多い。例えば、PC内の特定のフォルダをオンラインストレージと同期するように設定しておけば、PCとオンラインストレージには常に同じファイルを配置しておける。同じように、スマートフォンやタブレットとオンラインストレージも同期できる。このように、オンラインストレージを介在して、スマートフォンとPCのデータを同期したり、複数のPCのデータを同期することができる。
同期しているファイルがどこかのデバイスで修正されたり削除されると、オンラインストレージを介してすぐに別のデバイス上のデータにも反映される。もし、両方でデータが変更された場合には、衝突(Confilit)が検出され、同期エラーになったり、別のファイル名で保管されたりする。また、自動的に履歴も残るため、同期前のデータに戻すこともできる。
オンラインストレージとファイルサーバの違い
企業などでよく利用されているファイルサーバは、1つのファイルを多くのデバイスや人が共有する。管理者は、ユーザがどのファイルやフォルダにアクセスできるのかを一括管理することができる。また、一般的にはファイルサーバのディスクを冗長化したり、バックアップを取得することで、データの保全も行うことができる。ファイルサーバは、集中管理型のサービスなのである。
一方、オンラインストレージでは、ファイルの共有範囲はユーザが決める。オンラインストレージ上のデータは、ファイルサーバと同様に保全されているが、さらに別のデバイス上にも同期され保管されている。そのため、オンラインストレージは、分散型のサービスである。
オンラインストレージのリスク
オンラインストレージのほとんどのサービスの通信は、SSL/TLSによって暗号化されているため、安全に通信を行うことができる。
しかし、オンラインストレージは、分散型のサービスであるため、ビジネスで利用する時には企業の方針や管理者のポリシーで管理しにくい。また、データの私的な複製も作りやすい。そのため、機密情報の漏洩の危険がある。また、海外の事業者が行っているサービスの場合には、日本の法律では保護されないため注意が必要である。
例えば、日本では個人情報保護法があり、事業者は個人情報が漏洩しないように管理する義務を負っている。しかし、米国では、日本ほど個人情報の管理が厳しく行われていない。また、中国には対応する法律がないばかりか、政府が多くの秘密情報にアクセスすることを許可している。さらに、利用規約に規定があっても適切に守られない国もある。
クラウド上に存在しているオンラインストレージは、どこの国で管理されているか公開されていることはほとんどない。そのため、特に法人での利用では注意が必要である。
OSSのオンラインストレージ
こうしたリスクがあるため、重要な機密データを扱う企業では、オンラインストレージを自社で管理したいというニーズがある。このようなケースでは、OSSのオンラインストレージソフトウェアを利用すれば、専用のオンラインストレージを構築することができる。
専用のオンラインストレージを利用すれば、企業の管理者が発行したアカウント間でしかデータ共有ができなくなったり、監査ログを保管するなど、十分なセキュリティ対策を行うことができる。また、企業内にあるファイルサーバとデータを共有したり、同期したりすることも可能である。
ownCloud
ownCloudは、オンラインストレージを構築できるソフトウェアである。ownCloud社が開発、管理している。PHPやJavaScriptなどで開発されている。クライアントは、Windows、MacOS、Linux、Android、iOSなどに対応している。AndroidやiOSのクライアントは有償である。
ファイルの共有、履歴管理、ログの保管など、オンラインストレージに必要なほとんどの機能を網羅している。また、カレンダーなどの拡張機能もあり、グループウェアとしても利用が可能である。さらに、企業内での利用のためLDAPやActiveDirectoryなどの認証サーバとの連携ができる。
ownCloudには、コミュニティ版とEnterprise版がある。Enterprise版ではownCloud社のサポートを受けることができる。
Nextcloud
Nextcloudは、ownCloudからフォークして誕生したオープンソースのソフトウェアである。ownCloudが徐々にエンタープライズ版の開発にシフトしたため、開発者であるフランク・カーリチェック氏らの開発メンバーが立ち上げたコミュニティで管理されている。
Nextcloudは、もともとownCloudのフォークであるため、機能的にはほとんど差がない。ownCloudでは有償のエンタープライズ版のみで提供される機能についても、Nextcloudでは無償で利用することができる。また、AndoridやiOSのクライアントも無償で配布されている。
デージーネットの取り組み
デージーネットでは、ownCloudのコミュニティ版やNextcloudを利用した企業向けの専用オンラインストレージサーバの構築を行っている。オンプレミスでの構築にも、クラウドでの構築にも対応する。
デージーネットで構築したサーバでは、Open Smart Assistanceとよばれるサポートサービスを受けることができる。使い方に関するQ&Aだけでなく、障害時のサポートも受けることができる。
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