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ビジネスチャットツールのおすすめOSS比較4選(2023年版)

現在、働き方改革の推進やテレワークの普及により、従来のメールや電話というコミュニケーションツールではなく、ビジネスチャットが注目されています。特にテレワークでは、メールや電話よりも手軽に連絡が行えることから、情報共有をスムーズに行うことができ、業務の効率を改善する効果も期待できます。ここでは、主要なOSSのビジネスチャットツールである「Rocket.Chat」、「Zulip」、「Mattermost」、「Nextcloud Talk」の主な特徴について紹介します。

目次

ビジネスチャットとは

ビジネスチャットの画像

ビジネスチャットとは、チャット形式のコミュニケーションを取るツールやサービスのことです。社内外の人と気軽にコミュニケーションを取ることのできるため、メールや電話の代替手段として活用されています。

メールの場合、自分の名前、相手の名前を書いて、挨拶文を書くのが一般的なルールです。一方ビジネスチャットでは、こうした冗長な内容を省き、要件だけを短い文章で伝えることができます。メールと同様、相手の状態にかかわらずメッセージを送ることができますが、相手が会話できる状態であれば、リアルタイムに近い感覚で会話を行うこともできます。また、絵文字を利用すれば、感情やニュアンスも分かりやすくなります。

ビジネスチャットにも様々な種類があります。クラウド型の有料サービスとして提供されている代表的なビジネスチャットツールとして、Slack、Line Works、Chatwork、Microsoft Teamsなどがあります。また、OSSのビジネスチャットツールを利用して、自社の専用システムを構築する方法もあります。ビジネスチャットを導入する際は、こうした選択肢の中から、組織の状況に合わせて適切なチャットツールを選ぶ必要があります。

ビジネスチャットのメリット

ビジネスチャットを利用することで、これまでにない様々なメリットが期待できます。ここでは、ツールの選択の基準となる、ビジネスチャットの一般的な機能とメリットについて紹介します。

利用端末

一般的なビジネスチャットは、PCのWebブラウザから利用することができます。さらに、スマートフォン用のビジネスチャットアプリが提供されていると、社外からもチャットに参加することができて、大変便利です。

情報共有

チャットルーム内で、WordやExcelのようなOffice文書や、PDFのようなファイルが共有できるととても便利です。メールの添付ファイルよりも気軽にファイルを共有することができます。ファイルの共有により、情報共有が促進され、効率化を実現できます。

会話履歴

過去の会話が保管されていると、指示を確認したり、Q&Aの状況を見返したりすることも可能です。また、会話の履歴の中から、キーワードを探す機能があると便利です。

グループ機能

一般的なビジネスチャットでは、LINEのように自由にグループを作成することもできます。部署、チーム、プロジェクト、ミーティングなど、仕事の単位に合わせてグループを作ることで、リモートワークや在宅勤務などでも場所を選ばず会議を行うことができ、利便性も向上します。

Web会議との連携

ビジネスチャットツールと連携してWeb会議を行う機能です。1対1の会議や作成したグループ内での会議をスムーズに実施することができ、リモートワークや在宅勤務での利便性が向上します。

監査機能

ビジネスチャットのツール内で、パワハラやセクハラなどの事故が発生する可能性があります。こうしたリスクを考えると、コミュニケーションのマナーやルールを適切に守ってツールが利用されているかを監査する機能があると、安心して導入する事ができます。大企業等での導入では重視されている機能です。監査機能があるだけでも抑止力として働き、ある程度は従業員の間のトラブルを防ぐことが期待できます。さらに、発言中に特定のキーワードがあった場合の管理者へのアラート通知は、問題の早期発見にも役立つ機能です。

クラウド型ビジネスチャット

クラウド型ビジネスチャットで、最もよく使われているのがSlackです。Slackは、2013年からアメリカのSlack Technologies社が提供しているビジネスチャットサービスです。日本でもIT業界を中心に利用されています。

Slackには次のような特徴があります。

  • チームやプロジェクト別など必要に応じてチャンネルを作成することができる
  • チャンネルの参加や退出は自由に行うことができる
  • 顧客や社外の関係者、企業とチャンネルを共有することで、担当者を一つのチャンネルに集結が可能になる
  • 音声通話やビデオ通話で会話ができ、さらに画面の共有も可能
  • PDF、画像、動画ファイルなどのデータを共有し、必要に応じてダウンロードできる
  • SkypeやGoogleハングアウト、Dropboxなどの1,500点以上の外部アプリと連携ができる

クラウド型ビジネスチャットの課題

一般的なクラウドサービスのビジネスチャットツールを利用する場合、以下のような課題があります。

情報漏えいのリスクがある

2021年4月に、LINEで取り扱う日本のユーザーのデータが海外に保管されていたことが判明し、LINEは行政指導を受けました。このように、LINE、Slack、Teams等のクラウド型ビジネスチャットツールを使用する場合、やりとりの履歴がサービス提供サイトに残るという大きなデメリットがあります。クラウド型のビジネスチャットサービスでも、制限されたユーザーにアクセスを絞ることはできますが、外部に機密情報や個人情報を残すことに対して不安があります。

こうした問題から、最近になって、OSSのビジネスチャットツールを採用する企業が増えています。OSSならオンプレミス環境に構築することで、重要な機密情報や個人情報を組織内に保存できます。これが、クラウドサービスと比較した最大の違いです。OSSを使ってビジネスチャットのシステムを構築すれば、セキュリティ面が強化され、安全で便利にビジネスチャットツールを利用することができます。

ユーザー数によって高いコストがかかる

SlackやLine Worksなどのクラウド型のツールには無料のプランもありますが、多くの場合、利用人数や機能、保存できるメッセージの容量などに制限があります。そのため通常は、利用人数によって月額で課金が行われる有料プランの契約を検討することが多いようです。しかし、従業員数の多い企業や組織では、すべての社員にアカウントを用意するとなると非常にコストが掛かります。また、外部の取引先とプロジェクトを共有する際にチャットを利用するようなケースでは、「どちらが料金を支払うか」という問題も起こります。

一方、OSSなら利用する人数やディスク容量によって追加で費用がかかることはありません。組織を越えた利用もしやすいため、社内外を問わず、費用の心配なく業務効率化が促進できるという点でメリットがあります。

以下では、比較的人気のある3つのOSSのビジネスチャットを紹介し、詳細を解説します。これらのOSSを使えば、オンプレミス環境でビジネスチャットサービスを使えるようになります。

OSSのビジネスチャットツール「Rocket.Chat」

Rocke.Chat_PCの画像

Rocket.Chatは、国内では最も普及していて、シェアが高く導入事例が最も多いオープンソースのビジネスチャットツールです。サーバのソフトウェアだけでなく、スマホ用のビジネスチャットアプリも公開されていて、無料で入手することができます。Slackを意識して開発されているため使い方もよく似ていて、簡単に利用することができます。Active Directoryとの連携などの機能を備え、エンタープライズ向けの利用では、おすすめのソフトウェアです。

なお、コミュニティ版のRocket.Chatバージョン6以降では、同時接続ユーザ数が200名を超えるとユーザの在籍表示ができなくなるといった一部の機能制限が導入されています。

Rocket.Chatには次のような特徴があります。

用途にあわせたチャットルームの作成

Rocket.Chatは、用途に合わせて公開用、限定公開、非公開の3つのスタイルで設定することができます。例えば、組織の内部だけで使う場合には非公開のチャットルームとして、管理者が登録したユーザだけが利用できるようにします。

一方、組織の枠を超えて利用するには、公開、または限定公開にすると便利です。公開のルームは、Webページから参加申請をすれば誰でも利用できるようなスタイルです。また、限定公開のルームは、参加者から招待された人が参加できます。

自由にチャンネルが作成できる

さらに、チャットルームの中には複数のチャネルを作成することができます。誰でもが参加できる公開チャネル、特定のグループの中だけで利用する非公開チャネル、一対一で利用するDirectメッセージなど用途に応じて、使い分けることができます。

ウェブブラウザやモバイルアプリケーションでの利用

Rocket.Chatでは、スマートフォン用のビジネスチャットアプリも利用することができます。AndroidやiOSに対応したビジネスチャットアプリが無料で配布されています。そのため、出張中や外出中にもやりとりの内容をチェックできます。

Rocket.Chat_loginの画像

充実したチャット機能

Rocket.Chatは、非常にシンプルな作りになっていて、直観的に利用することができます。基本的な機能に加え、メッセージの未読/既読の表示、メッセージの履歴を検索、引用、ファイル共有、いいね機能など、必要な機能は網羅されています。LINEのスタンプのような機能はありませんが、絵文字を使うことはできます。その他にも、メンションをつけての返信によるポップアップ通知、チャンネル送信によるスレッド展開、リンク先の自動プレビューやアイコン画像の変更も可能です。また、グループ内での複数人でのやりとり(グループチャット)や、自分と相手だけの1対1のプライベートなやりとり(Directメッセージ)にももちろん対応しています。

このような機能を活用することで、円滑で迅速なコミュニケーションを行うことが可能です。全ユーザが投稿可能なグループを作成しておくことで、社内SNSや掲示板としても利用することも可能です。

LDAPサーバやActive Directoryサーバとの連携

Rocket.ChatはLDAPサーバと連携することで、ログイン時のユーザ認証をLDAPに問い合わせることができます。LDAPサーバに接続し、ユーザ認証が成功した場合、Rocket.Chatのツール内にアカウントが作成され、ログインすることができるようになります。

企業や大学等、LDAPを使用してアカウント管理を行っている環境にビジネスチャットツールを導入する場合、ユーザ認証の連携は必須の機能となります。Rocket.Chatを使用すれば、LDAPサーバのアカウント情報と連携することができます。Rocket.ChatはLDAPと同様にActive Directoryとの連携も可能になります。

外部アプリと連携

Rocket.ChatはTwitter、FacebookなどのSNSにOAuth認証を付けることでTwitter、Facebookと連携することができます。また、WebhookやHubotなどのAPIを使って、他のツールと連携する独自機能を開発したり、カスタマイズを行うこともできます。Rocket.Chatでは、このAPIを利用する様々なアプリも公開されていて、Subversion、Redmine、Jenkinsを連携させることもできます。

Web会議との連携ができる

Rocket.ChatにはWeb会議との連携機能があるのもおすすめのポイントの一つです。Web会議のバックエンドとしては、Jitsiと連携することができます。Jitsiと連携すると、チャットで会話していたユーザ全員で、すぐにWeb会議での対面でのコミュニケーションに移行する事ができます。また、デスクトップ画面の共有ができるため、ビデオ会議でプレゼンテーション資料、アプリケーションの操作等の共有をすることができます。

会話ログを取得することもできる

Rocket.Chatの外部連携機能をうまく利用すると、チャットで行われた会話を外部に会話ログとして記録しておくことも可能です。トークの内容や時間を記録しておけば、仕事の中で不適切なマナー違反やルール違反の会話が行われていないかを監査することができ、トラブルを未然に防ぐことができます。また、運用の際に情報漏洩が発生した場合でも調査を行うことができます。

Rocket.Chat詳細情報 Rocket.Chat構築事例 Rocket.Chatコンサル Rocket.Chat無料資料 Rocket.Chatマニュアル お問合せ

OSSのビジネスチャットツール「Zulip」

Zulipの画像

Zulipとは、2012年にリリースされたオープンソースソフトウェアのチャットシステムです。Slackのように他のユーザとリアルタイムに文字で会話することができます。Zulipは、メッセージ送信方法が多数あり、多機能なチャットシステムです。秒間数百件のメッセージのやりとりに耐えられるスペックがあるため、利用人数が多い場合にも適しています。

Zulipには、以下の特徴があります。

トピック形式で会話を管理

通常のチャットシステムの場合、グループに対して一つのルームでやり取りを行うことが多いですが、後から書いた内容を探すのに手間な場合があります。Zulipは、ストリームという単位でチャットルームを管理します。この一つのストリームの中で、トピックとして話題に応じて会話のグループを作成することができます。メールをスレッドで管理するような形式で表示され、話題に応じてルームを作成することができるので、会話の整理や履歴の検索がしやすくなります。

モバイルアプリの利用が可能

Zulipは、AndroidとiOSのモバイルアプリが存在します。Google PlayやApple Storeからダウンロードすることで、スマフォやタブレットからの利用が可能になります。また、Zulip公式のプッシュ通知サービスに登録することで、プッシュ通知も行うことができます。インターネットに接続可能な環境であれば、制限なくプッシュ通知を受けることが可能です。

Web会議システムと連携

Zulipは、OSSのWeb会議システムと連携させることで、トークルームからWeb会議を行うことができます。現在、Zulipは、Web会議システムのJitsi MeetとBig Blue Buttonと連携することが可能です。トークの中にあるビデオカメラのアイコンをクリックすることで自動的に会議のURLが発行されます。作成しているグループに一人ずつ招待URLを共有する必要がなく、すぐにWeb会議を行うことができます。

Zulip詳細情報 Zulip無料資料 お問合せ

OSSのビジネスチャットツール「Mattermost」

Mattermost_PCの画像

MattermostもSlackを意識して作られた、オープンソースのビジネスチャットツールです。そのため、見た目や使い方もSlackと良く似ています。

Mattermostには、次のような特徴があります。

チームの作成

Mattermost内で作成するコミュニティです。チームにメンバーが所属し、チームにメンバーが会話を行うためのチャネルを作成します。チーム名や説明を加えることができ、チームの管理者がチームメンバーの管理も行うことができます。

チャンネルの作成

MattermostもRocket.Chatと同じようにチャンネルを作成することができます。

  • 公開チャンネル
  • 非公開チャンネル
  • ダイレクトメッセージ(1対1)

ウェブブラウザやモバイルアプリケーションからでの利用

Rocket.Chat同様、ウェブやモバイルから利用することができます。またアプリ版なら、メッセージ受信をPush通知で知ることができます。

サービス連携

Mattermostは、Slackと同様なhubot等integration機能で連携が可能です。

Mattermost詳細情報 Mattermost無料資料 お問合せ

ビジネスチャット機能のプラグイン「Nextcloud Talk」

Nextcloud Talk_PCの画像

Nextcloudは、OSSのクラウドストレージソフトウェアです。ストレージ機能だけでなく、グループウェアとしての機能も豊富に備えています。Nextcloudは、プラグインを使って機能を拡張することができ、予定の管理(カレンダー)、タスク管理、アンケートなど、さまざまなコラボレーション用のプラグインが公開されています。そのプラグインの一つとして提供されているのが、Nextcloud Talkです。

Nextcloud Talkを利用すると、チャット機能やビデオ会議を行うことができます。

以前は、Nextcloudのコミュニティー版では、日本語が正しく表示されませんでしたが、現在はきちんと表示されるようになっています。ただし、ビデオ会議の数には制限があります。そのため、Nextcloudでビデオ会議の機能を利用するには、商用サポート版を利用したほうが便利です。

Nextcloud詳細情報 Nextcloud構築事例 Nextcloud無料資料 Nextcloudマニュアル お問合せ

チャットシステム機能比較

今回紹介したOSSのチャットシステム、Rocket.Chat、Zulip、Mattermost、Nextcloud Talkの機能を比較しました。

Rocket.Chat Zulip Mattermost Nextcloud Talk
トークルームの
作成
公開ルーム:
誰でも参加可能
非公開ルーム:
招待された
メンバーのみ
ダイレクトメッセージ
1対1での会話
パブリック:
誰でも参加可能
プライベート:
招待された
メンバーのみ
※新メンバーへの過去の履歴の表示を制限できる
ダイレクト:
1対1での会話
公開チャンネル:
誰でも参加可能
非公開チャンネル:
招待された
メンバーのみ
ダイレクトメッセージ:
1対1での会話
プライベート:
招待された
メンバーのみ
オープン:
誰でも参加可能
既読表示 v6から
制限あり
有償版で可能 ×
入力中…の表示 v6から
制限あり
ダイレクト
ルームのみ対応
Markdown方式でメッセージ送信 ×
メッセージ
受信通知
ファイル共有
メッセージの検索 ×
メッセージの予約 × × ×
スレッド式の会話 ×
ゲストユーザ機能 コミュニティ版はなし ×
Web会議連携
ボット機能
モバイルアプリ v6から
制限あり
LDAP連携 有償版で可能
SSO認証 有償版で可能
監査ログ リアルタイムにAPIで取得 定期的にDB
から取得
有償版で可能(β) 定期的にDB
から取得
システムの
複数構成
× 有償版で可能
デフォルトのユーザ管理の仕組み Web UI
から操作
コマンドライン
から操作
コマンドライン
から操作
Web UI
から操作
ユーザの権限設定
※作成したルームの変更など一部管理者のみの操作
×

上記で比較した通り、それぞれのチャットツールによってメリット・デメリットが存在するため、導入前に要件を確認し、利用規模や用途に合わせて最適なツールを選択する必要があります。デージーネットでは、お客様の状況に合わせて無料見積を実施しておりますので、お気軽にご相談ください。

デージーネットの取り組み

デージーネットの社内では、Rocket.Chatを利用しています。今までは、自治体、金融、製造業などのお客様からのオンプレミスのチャットツールを導入したいというご要望には、Rocket.Chatを提案していました。これは、Rocket.Chatが非常に安定したソフトウェアであり、LDAPやActive Directoryと連携ができるからです。今までも、Rocket.Chatを使ったビジネスチャットツールのシステム構築や、Rocket.Chatの性能改善のためのコンサルティングなどの実績があります。また、規模の大きな組織での導入実績もあります。

しかし、Rocket.Chatのバージョン6では、オープンソース版で利用できる機能に制限がかかってしまい、利用していくには制約がある場合があります。今後は、お客様のご要望によって、Rocket.ChatやZulipなど規模に合わせて最適な構成を提案していきます。

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