eラーニングとは
eラーニング(e-learning)とは、インターネットを活用した学習方法のことである。サーバ(学習管理システム)に保存した動画などの教材を配信し、パソコンやDVDなどの「情報技術」を利用して行う。eラーニングを使った学習法や使用する媒体は、年々多様化しており、スマートフォンやタブレットなどの「モバイル機器」でも提供されるようになったほか、学習のコンテンツについても「動画」を活用した手法のものも出てきた。今後もこのように多くのメリットがあるeラーニングを利用した学習方法は企業の研修や教育現場などで導入が拡大し、手法やツールがどんどん進化していくと予想される。
eラーニングの歴史と変化
インターネットが広く普及するまでの学習形態は、遠隔での学習方法の場合CDやDVDを受講者に送付し、動画教材を各受講者が再生・視聴することが主流であった。しかし、1990年代頃、パソコンの普及に伴い、eラーニングという電子端末を用いた教育サービスが発展し活用され始めた。このeラーニングは、CDやDVD教材よりも運用コストが少なく、学習者は自分のペースで学習時間をとることができる。しかし、学習方法としては、一般に動画などのコンテンツを配信する機能のみであったため、無関係のユーザが利用できないように制限をかける機能がない、管理者や講師が配信した教材を受講者が閲覧したかどうかがわからない、受講者のモチベーションや進捗状況の管理が難しいという問題点が指摘されていた。
そして、近年、多く活用されているeラーニングシステムが、オンライン学習の記録をしたり、自身の成績を確認したりできる必要な機能をあらかじめ搭載した「学習管理システム(Learning Management System)」を採用している。現在では、2020年春頃からの新型コロナウイルス(COVID-19)拡大も相まって、企業で新入社員教育での活用や教育機関で活用しようと大きく注目されている。
eラーニングの活用方法
実際にeラーニングを使用する際、必要なものは主に2つある。それは、「教材」と「学習管理システム」である。
- 教材とは
eラーニングに使用する教材は、基本的に「静止画」「音声」「文章」「映像」などを組み合わせたマルチメディアである。視覚や聴覚など複数の感覚を使用するため、わかりやすい効果的な学習が可能である。
- 学習管理システムとは
学習管理システム(Learning Management System)は、インターネット上でeラーニングを管理・提供するためのOS(オペレーションシステム)のようなプラットフォームのことである。Google ChromeやSafari、FirefoxなどのWebブラウザを用いたWebサービスとして提供される。このシステムでは、受講者の進捗状況や成績の管理、学習教材・ツールの登録管理などを一元管理することができる。
この2つを用いてeラーニングで受講内容や活用方法に合わせて効果的に学習をすることができる。
eラーニングの活用メリット
eラーニングを活用する運営や講師、受講者にとってのメリットを紹介する。
運営側のメリット
- コストが削減できる
教育機関や企業が多くの人々に対して人材育成の機会を提供するには、従来であれば、会場の予約や教材の印刷などの費用がかかっていた。eラーニングを導入することで、そのようなコストを削減することができる。さらに、会場手配やスケジュール調整の時間も削減できるというメリットがある。
- 多くの学習者に一斉に一律に提供できる
遠隔地にある支店などでも、交通費や宿泊費をかけることなく、本店と同じ内容の人材教育や企業研修を行うことができる。人数制限を設ける必要もなく、講師による内容の偏りも防ぐことができる。
- 受講者への連絡や問い合わせや対応も可能
eラーニングの学習管理システムを使用することで教材や関連資料の配布を容易に行うことができる。また、受講者からの講義に関する疑問点や講師からの不定期な質問、問い合わせに応じることも電話やメールなどの個別連絡と比較すると簡単に行うことができる。よくある質問(FAQ)サイトなどもシステム上に掲載しておけば、同じような問い合わせ自体を減らすことにつながる。
講師側のメリット
- 効率的に業務が遂行できる
講師は、それぞれの授業ごとに資料の作製や教材の準備を行うが、eラーニングでは、データを用意すればいいため印刷するなどの作業がなくなり、ほかの業務効率が向上される。さらに、会場までの交通時間、交通費を削減することができる。
- 教材の更新や転用が簡単に行える
従来の集合研修では、受講者に一度配布してしまった教科書といった教材を回収することや変更することは非常に困難であった。しかし、学習管理システムを利用の際は、一度制作した教材は繰り返し利用、教材内容の変更にすぐに対応することができる。再利用が可能なため教育ノウハウを蓄積し教育の質を高めていくことも可能である。さらに、常に効果的な学習教材や最新のツールを全ての受講者に対して提供できるようになるというメリットがある。
- クラスごとに同じ授業を行う必要がない
多くの受講者に授業を行うためには、講師が全ての会場に出向いて授業を行う必要があったが、学習管理システムの導入により、一回の授業で多くの受講者に授業内容を提供することができる。また、多くの受講者がいても成績情報の集計や学習履歴、進捗状況を簡単に一括で管理することができる。
受講者側のメリット
- 時間や場所に捉われない
交通の便が良くない場所に住む受講者や、さまざまな理由から外出が困難な受講者も場所や時間を選ばず気軽に学習を進めることができる。自宅からの移動時間も必要ないため、時間に縛られることなく、仕事の合間などでも講座を受講することができる。
- 自分に合わせた研修が行える
eラーニングは多くの種類があるため、数多くの研修の中から受講者の希望や計画に合わせて受講する講座を選択することも可能である。会社やチームで目的に合わせた研修を受けたり、受講者の資格取得や自己啓発支援として本人の学びたい分野の研修を受講したりポイントを押さえた学習を行うこともできる。
- 繰り返し学習できる
分からないところや納得出来なかったところは解説を何度も見るなど自分が納得や理解するまで繰り返し学習することができる。自分の学習状況や学習履歴、講座の解説、テストの結果などもいつでもすぐに確認できるので、モチベーションの維持につながることもある。また、テキストなどの書籍だけと比べると教材が動画や音声により内容を理解しやすいというメリットもある。
eラーニングの活用デメリット
以上のように多くのメリットがある一方で、eラーニングの学習管理システムを導入するにおいてデメリットも存在する。
運営側のデメリット
- 導入・製作にITの知識・スキルが必要
eラーニングの環境構築や教材の作成には技術や手間が必要になる場合があるため、運営側や講師がそういった技術を習得する必要性がある。もしくは、IT知識に詳しい人員の確保が必要となる。
- 機密情報や社外秘などを扱う場合は、使用がはばかられることもある
社内研修や作業の動画マニュアルとなると、機密情報や社外秘を扱う場合があるため、eラーニングサービスの利用がはばかられるケースもある。
講師側のデメリット
- 教材を製作する手間やコストがかかりやすい
学習管理システムの導入や教材の作成に必要な機器など、ハードウェアやソフトウェアの導入にはどうしても初期費用がかかってしまう。また、仕組みの理解や操作する技術の取得が必要になることもある。
- 受講者のモチベーションや学習状況の把握が難しい
eラーニングの学習講座は対面ではないため、リアルタイムでの質問への応答や問題のディスカッションは難しい。また、受講者への効果が実感しにくいなど、モチベーションコントロールも難しい場合がある。
受講者側のデメリット
- デバイスとネットワーク環境が必要
どこでもいつでも受講することが可能な一方で、PCやスマートフォン等のデジタルデバイスとネットワーク環境の準備が必要になる。デバイスを所持していなかったり、ネットワーク環境が整っていなかったりすると対象のサイトにログインできず、受講することができないといった問題が生じる可能性がある。
- モチベーションの維持が難しい
受講者の好きなタイミングで学習できるが、中には学習意欲を高めたり維持したりすることが難しくなってしまうこともある。また、学習の進め方は個人によって差がある。
- 実技を伴う科目には向かない
パソコンやタブレットなどデバイスの画面越しでの講座受講になるため、スポーツなどの実践が伴う学習については、対面での学習には劣ってしまうことがある。また、人と人とのコミュニケーションを取る機会が減少してしまうこともデメリットである。
eラーニング活用シーン
具体的に、eラーニングを導入する主な活用シーンを紹介する。
- 社内向けの研修・教育
会社内のみならず、全国、海外にいる社員に対面での一斉研修を行うことは、スケジュール調整も会場や講師の確保も難しくなる上に、移動に必要なコストも時間もかかってしまう。eラーニングを導入することで、社員は個人の都合の良い時間に研修を受けることができるようになる。また、対面での研修の場合は、新入社研修や内定者研修などそれぞれ、理解度や能力などが異なる場合でも同時に進行しなければならない。しかし、eラーニングを活用した社員教育では社員それぞれが自分の能力や自分に合った目的、ペースで繰り返し学習することができる。さらに、遠い場所にいる社員でもオンライン上で情報の共有や連携・交流することが可能である。
- 社外向けの研修・教育
代理店・販売店が複数社ある場合や業務委託先などの社外のビジネスの教育にも活用することができる。対面での研修を実施することは、社外の社員のスケジュール調整から会場のセッティングなど手間がかかる。そこで、eラーニングを活用すると、研修実施の運営を大幅に削減でき、効率も高めることができる。さらに、学習者が近くにいなくても、学習履歴や進捗状況を管理し、オンラインテストを実施することで、高い水準の学習機会を提供することができる。
- 大学・高等教育の現場
インターネットを活用したeラーニングは、世界各国の高等教育機関で実際に活用されている。日本でも2001年の法改正によって、多くの大学や学校での導入が実現している。eラーニングの学校の教育への導入は、学生だけでなく、社会人や主婦(夫)、年配の方々など幅広い年代の方に学習の機会を提供することができ、学生以外のターゲット獲得につながると期待できる。また、学生に対しても、場所や時間を問わず自由に学べるeラーニングは大きな利便性を発揮する。大学の講義においても、テキストやプリントのみでの学習に比べ、映像や音声などを使用したeラーニングの教材でより分かり易く、学生のペースで納得できるまで繰り返し学習することが可能である。さらに最近では、遊びの要素を取り入れた「ゲーミフィケーション」といった新たな手法も注目されているため、年齢などに関係なくeラーニングを活用して学ぶことができる。
デージーネットの取り組み
デージーネットでは、複数のOSSを組み合わせ、成績管理や動画の視聴状況など、受講者の管理機能を充実させたOSSのeラーニングシステ厶LearNET(ラーネット)を開発した。このeラーニングシステムには、世界的にも利用されている学習管理システムのOSS「CanvasLMS」とYoutubeのような動画の保管・管理ができる動画配信システムのOSS「Avideo」を組み合わせている。LearNETは、専用のソフトウェアのインストールをすることなくWebブラウザ上で利用可能である。また、動画の視聴状況を確認することができるため、ユーザの学習状況を講師が確認することができる。
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