オープンソース

PPAPのセキュリティ問題を解決できるOSSの代替案とは?〜SaMMA〜

PPAPとは、メールでファイルデータをやり取りする時に、ファイルをパスワード付きZIP形式で暗号化して送付し、その後に別のメールでパスワードも送付するという手法です。現在PPAPは、日本国内の多くの企業でビジネス用メールを送る際に使われています。しかし近年、PPAPにおけるZIP暗号化の脆弱性やウイルス感染の危険性が高いと指摘されており、脱PPAPへの動きが加速しています。実際に、PPAPは日本以外の国ではあまり利用されていません。デージーネットで開発したオープンソースソフトウェアのSaMMAをPPAPの代替案として利用することで、セキュリティ対策の方針を徹底できるというメリットがあります。この記事では、PPAPの問題点について解説し、代替案としてSaMMAを利用する方法を詳細に紹介します。

目次

PPAPとは?

PPAPとは、ファイルを添付したメールのやりとりにおいて、添付ファイルをパスワード付きZIP形式で暗号化して送付し、そのあとでパスワードも送付するという手法のことをいいます。「Password付きzipファイルを送ります、Passwordを送ります、Aん号化(暗号化)Protocol(プロトコル)」の頭文字から、PPAPという造語が作られました。

以前は、IPA(独立行政法人 情報処理推進機構)が、メールの情報漏洩を防ぐためのセキュリティ対策として、PPAPの手法を推奨していました。そのため、日本国内では個人情報や機密性の高い情報の保護を目的として、現在も幅広く使われています。

しかし、2020年11月12日に平井デジタル改革担当大臣が定例会見にて、内閣府・内閣官房でのPPAPの利用を廃止し、今後は外部へのファイル送信に外部ストレージサービスを採用することや、中央省庁での実態調査をすすめることを発表しました。また、感染症対策で急速に増加したモバイルやテレワークの環境では、よりセキュリティ面でのリスクが高く危険だとも指摘されています。こうした政府の動きや働き方の変化を受け、PPAP問題、そしてPPAP問題を解決する代替案に注目が集まっています。

PPAP問題とは

PPAPの手法での添付ファイルの交換には、主に以下の3つの問題点があり、セキュリティのリスクが指摘されています。

  • 通信経路の盗聴に耐性がない

    そもそも、添付ファイルとパスワードを別のメールで送っても、短い間に同じ通信経路で送っているため、ネットワークを盗聴(盗み見)していればファイルとパスワードの両方の情報を奪取できてしまいます。そのため、情報漏えい防止の対策としてあまり意味がありません。

  • ZIPの暗号化強度が脆弱

    ZIPで広く利用されている暗号方式である「Zipcrypto」ですが、暗号強度が脆弱で、簡単に破られてしまう可能性があります。つまり、ZIPファイルだけ手に入れてしまえば、パスワードが無くても展開できてしまう可能性があります。

  • ウイルス・マルウェア感染のリスク

    メールのウイルスチェックを導入していても、ZIP暗号化されたパスワード付きの添付ファイルでは、ファイルの中身までウイルスを検知できません。この仕組みを逆手に取り、Emotetのようなマルウェアが仕込まれているファイルがメールサーバのチェックをすり抜けてしまうと、ウイルスやマルウェアに感染してしまう恐れがあります。

以上のような問題点から、総務省も「令和2年版情報通信白書」の中でPPAP問題を取り上げ、ファイル添付メールを利用したマルウェアによる感染拡大に警鐘を鳴らしています。

なお、デージーネットが2023年1月に行ったアンケート調査によると、PPAPの対策をしている、またはこれからする予定である企業が全体の4割を超え、日本企業でのPPAP対策が着実に進みつつあることが分かっています。

PPAPの代替案

では、PPAP問題の対策としては何をすれば良いでしょうか?PPAP問題の解決策としての代替案は複数ありますが、代表的な手段として、S/MIMEという暗号方式を使う方法、チャットツールなどを使う方法、オンラインストレージを使う方法、という主にこの3つがよく提唱されています。

S/MIMEを使う方法

S/MIME(Secure / Multipurpose Internet Mail Extensions)とは、メールのセキュリティ対策に使われる暗号化方式のひとつです。ただしこの方法では、第三者機関の認証局が発行した電子証明書を利用する必要があります。また、送受信者ともS/MIMEに対応したソフトウェアを利用する必要があり、導入のハードルが高くなっています。

チャットツールを使う方法

メールではなく、チャットツール上でファイルを共有する方法です。しかし、送受信者ともに同じツールを使用する必要があるため、同じチャットツールを利用していない相手にはファイルを共有できないというデメリットがあります。

オンラインストレージを使う方法

この方法では、ファイルをオンラインストレージにアップロードし、ダウンロード用のWEBサイトのURLをメールに記載して送信します。PPAPの代替案としては、この方法が最も有力と考えられています。デージーネットが2023年1月に行ったアンケート調査では、全体の約3割の企業が、このオンラインストレージを使う方法でPPAPの対策をしているという結果も出ています。

ただし、この一連の作業は手間と時間がかかるため効率が悪く、送信者側・受信者側の双方にとって負担が大きいという問題があります。また、クラウドサービスのオンラインストレージの利用に費用が発生することも課題として挙げられています。

以下では、このオンラインストレージを使う方法における運用の手間を減らし、確実にファイルの交換が行われるようにするソリューションとしてSaMMAを紹介します。SaMMAを使うことで、安全性と利便性を両立しながら添付ファイルをやり取りすることができます。そのためデージーネットでは、PPAP対策としてSaMMAの導入をおすすめしています。

SaMMAでPPAP対策をする方法

SaMMAは、メールサーバで添付ファイルを安全にやりとりできるようにするOSSです。SaMMAの動作モードのうち、PPAP問題の対策の代替案としては、添付ファイル安全化モードの「オンラインストレージ連携方式」「削除モード」の2つの方法が有効です。特にオンラインストレージ連携方式を使うことで、従来よりも安全かつ手軽に添付ファイルを送信できます。次の項目では、「オンラインストレージ連携方式」「削除モード」について詳しく解説します。

添付ファイル安全化モード(オンラインストレージ連携方式)

SaMMAのオンラインストレージ連携方式では、メール送信時、オンラインストレージのOSSであるNextcloudに添付ファイルを保管します。その共有URLをメールに添付することで、受信者は添付ファイルをダウンロードすることができます。このオンラインストレージ連携方式は、具体的に次のような手順で処理が行われます。

  1. メールサーバがメールを受信すると、メールサーバは添付ファイルの有無に関わらず自動的にSaMMAを呼び出します。
  2. SaMMAは、宛先が社外の場合には、添付ファイルの有無を確認します。添付ファイルがある場合には、添付ファイルを取り出します。
  3. Nextcloudの共有リンクに設定するパスワードを生成します。
  4. 取り出した添付ファイルを、Nextcloudに保存します。
  5. Nextcloudに保管したファイルにファイル共有の設定を行い、共有リンクとパスワードを設定します。
  6. 共有リンクの情報を記載した情報を作成し、それを添付するようにメールを再構成します(本文は修正しません)。
  7. 再構成したメールを元の宛先に送信します。
  8. 添付ファイルの暗号化に使ったパスワードをパスワード通知メールに記載して送信者に通知します。
  9. メールの受信者は、メールに記載されているURLをクリックし、Nextcloudにアクセスしてファイルをダウンロードすることができます。

SaMMAでの添付ファイルの暗号化フロー

オンラインストレージ連携方式を利用することで、以下のようなメリットがあります。

セキュアなファイル交換が可能

Nextcloudへの参照がTLS暗号化で保護されていれば、通信経路上で悪意を持った第三者がファイルを盗み見たり改ざんすることはできません。また、この方式の経路上では、ウイルスチェックを行うことも可能です。そのため、安全にファイルをやり取りすることができます。万が一メールを誤送信した場合は、オンラインストレージから添付ファイルを削除することで情報漏洩を防ぐことができます。

今まで通りの方法でメールを送信できる

添付ファイルは自動的にオンラインストレージにアップロードされるため、ファイルのアップロードやパスワードの作成の手間がかかりません。そのため、通常の添付メールを送る方法でPPAP対策を講じることができます。

大容量のファイルにも対応できる

オンラインストレージのNextcloudを使ってファイルを共有することで、通常メールで受け渡しできないような大容量のファイルも共有することができます。

コストを抑えて、オンプレミスでの運用が可能

クラウドサービスのオンラインストレージを契約する場合は、アカウント数やストレージ容量などによって費用がかかります。一方、Nextcloudはオープンソースソフトウェアなので、これらの費用は不要で、導入にかかるコストを抑えることができます。また、Nextcloudはオンプレミス環境でも構築できるため、会社のセキュリティポリシーにしたがった運用が可能です。

このように、オンラインストレージを使うことで、添付ファイルが確実に相手に届けられるため、セキュリティが強化され、安心してメールをやり取りすることができます。その上、利便性も向上し、業務の生産性を改善する効果が見込めます。

なお、SaMMAバージョン5.0.3以降、Microsoft365(旧:Office365)等のクラウドサービスのメールを利用している場合でもSaMMAが利用できるようになっています。

削除モード

SaMMAの削除モードは、送信元の情報が不明だったり、送信元が認証されていなかったりした添付ファイルを自動で削除する方法です。送信元によらず、無条件にすべての添付ファイルを削除することも可能です。元の添付ファイルを削除した後は、削除したファイルのファイル名を羅列したテキストファイルが自動で生成され、新たに添付されます。このモードは、メールを送信する時にも受信する時にも利用できます。添付ファイルの利用自体を禁止することで、PPAP問題の対策となり、セキュリティを高めることができます。

削除モード

なお、従来のPPAPの方法でメールを送信したい場合は、添付ファイル安全化モードの「パスワードZIP変換方式」が利用できます。「パスワードZIP変換方式」では、メールの添付ファイルをすべて1つのパスワード付きZIPファイルに置き換え、受信者には添付ファイルが置き換えられたメールが届けられます。メールサーバと連携し、自動的に添付ファイルを暗号化ZIP形式に変換するため、ZIPファイルの作成やパスワードの作成の手間を省くことができます。

SaMMAでできる柔軟な設定変更

添付ファイルの送信方法のルールは企業や組織によって様々です。そのため、取引先ごとなど、送信先によって柔軟に設定を変更できるかどうかも重要です。SaMMAでは、そのようなルールに対応できるように細かく設定を変更することができます。また、SaMMAにはGUIで設定を行うための管理ツール(SaMMAadmin)が用意されています。SaMMAの設定はWebインターフェース上から簡単に行うことができます。例えば、以下のような設定を行うことができます

外部に送られるメールだけを安全化

SaMMAは、メールの送信元と送信先を確認して、組織の内部から外部へ送信するメールの添付ファイルだけを安全化します。どのメールアドレスが組織内のアドレスかは、管理者用内部ドメイン設定画面で条件を設定することができます。設定は、ドメインだけでなく、メールアドレス単位でも行うことができます。つまり、特定の送信者の添付ファイルだけを安全化したり、安全化しなかったりという制御ができます。

管理者用内部ドメイン設定一覧画面

特定アドレスからの添付ファイルを暗号化

宛先での添付ファイルの暗号化制御

SaMMAでは、メールの送信先によって添付ファイルの安全化を行うかどうかまた、どの安全化方法を選択するかを変更することができます。

管理者用受信者設定一覧画面

メール送信先によって添付ファイルの暗号化方法を変更

取引先によって通信のポリシーが異なる場合には、この機能が非常に便利です。例えば、基本的には添付ファイルを暗号化したいと思っていても、取引先によっては、添付ファイルの安全化を望まないケースもあります。その場合には、添付ファイルの安全化ルールを×に設定します。すると、A社とのメールでは、添付ファイルの安全化は行われず、そのままの状態でメールが配送されます。

その他に、安全化の方法を「パスワードZIP変換方式」と「オンラインストレージ連携方式」に選択することが可能です。安全化はしたいけど、オンラインストレージではなく、ZIP方式で送付したいというようなニーズに応えることができます。

また、取引先によっては、あらかじめ取り決めたパスワードを利用することを求められる場合があります。その場合には、添付ファイルの安全化方式を「個別」とします。すると、あらかじめ設定したパスワードが使われます。

利用者ごとの添付ファイル暗号化の設定

SaMMAは、標準では、管理者が組織全体としてのポリシーを設定し、それを全メールに適用するようになっています。しかし、利用者毎に設定を行えるようにすることもできます。

ユーザ用添付ファイル安全化設定一覧画面

添付ファイル暗号化設定一覧

この機能を利用する場合には、SaMMAadminに利用者を登録するか、ActiveDirectoryなどの別の認証システムと連携する必要があります。なお、利用者毎に設定を行えるようにする場合には、組織全体のポリシーを「暗号化しない」と設定しておく必要があります。組織全体で添付ファイルの安全化を行うように設定し、利用者が個人的に添付ファイルを安全化しない選択をすることはできません。それ自体がセキュリティホールになってしまうためです。

デージーネットのサービス内容

SaMMAは、デージーネットが開発し、管理を行っているOSSです。導入をご検討の際はお気軽にお問い合わせください。

メールシステムの構築サービス

メールシステムの構築サービス

デージーネットでは、お客様のご要望をしっかりヒアリングした上で、LinuxやOSSを組み合わせて最適なメールシステムをご提案します。SaMMAを利用した添付ファイルを安全化するメールシステムの構築もお任せください。その他、メールシステムとActiveDirectoryとの連携や、メールサーバの冗長化など、お客様の要件や環境に合わせたメールシステムを構築いたします。

SaMMAの商用サポート

添付ファイル暗号化ソフトSaMMAのサポート

デージーネットでは、SaMMAに対して次のようなサポートを行っています。

  • バイナリパッケージの提供
  • インストール時のQ&A
  • インシデントサポート
  • アップデートパッケージの継続的な提供

なお、本サポートではデージーネットが作成したバイナリパッケージを利用することが前提となっています。

SaMMAに対するご要望

デージーネットでは、SaMMAに対する様々な機能の要望を受け付けています。ご要望は、メーリングリストに投稿をお願いします。

SaMMAのカスタマイズ

また、デージーネットでは、有償にて添付ファイル暗号化ソフトSaMMAのカスタマイズも行っています。ただし、カスタマイズしたソフトウェアの版権を譲渡することはできません。カスタマイズした機能のうち、多くの利用者に有益な機能は、必要に応じてメジャーラインに取り込みを行い、OSSとして公開します。なお、セキュリティレベルを低下させるようなご要望、ご依頼はお引き受けできませんので、ご注意ください。

「情報の一覧」

添付ファイルのPPAP問題を解決する代替としてSaMMAを利用事例

SaMMA利用事例

PPAP対策の仕組みを取り入れたセキュリティの強化を検討されていた製造業者様に、PPAP対策を含んだWebメールサーバを構築した事例についての記事です。

メールサーバ(添付ファイル暗号化)構築事例

メールサーバ構築事例

このページでは、SaMMAを用いて、メールの添付ファイルを自動的に暗号化するシステムを導入した事例を紹介します。

標的型メール攻撃対策システム構築事例

標的型メール攻撃対策

標的型攻撃で使われるメールは、送信者を偽装して送信されるものが多いことが知られています。本事例は、オープンソースソフトウェアのSaMMAとENMAを組み合わせて、送信者を偽装した標的型メールの添付ファイルを自動的に削除することで、標的型攻撃を回避する機能を実現したものです。

メール転送時の添付ファイル削除システム構築事例

添付ファイル削除システム

Postfixの配送制御機能とSaMMAの添付ファイル削除機能を組み合わせて、携帯電話へメールを転送する時に、添付ファイルを削除するシステムを構築した事例です。

Nextcloud〜オンラインストレージ〜

メールサーバ構築事例

Nextcloudとは、オンラインストレージを構築できるオープンソースソフトウェアです。

NextcloudとPPAP対策

NextcloudとPPAP対策

Nextcloudは、デージーネットが開発したOSSであるSaMMAと連携して、PPAP対策を行うために利用することができます。

SaMMAマニュアル

SaMMAマニュアル

デージーネットが作成した、メールの添付ファイルを自動的に安全化するオープンソースソフトウェアSaMMAの利用マニュアルです。

SaMMAadminマニュアル

SaMMAadminマニュアル

デージーネットが作成したSaMMAの設定変更を、Webインタフェース上で行うことができるアプリケーションSaMMAadminの利用マニュアルです。

SaMMA ZIP無害化プラグイン

ZIP無害化プラグイン

SaMMA ZIP無害化プラグインは、標的型メール攻撃対策で、SaMMAの添付ファイル無害化機能を拡張するためのプラグインです。デージーネットが開発しオープンソースとして公開しています。

デモのお申込み

もっと使い方が知りたい方へ
SaMMAの操作方法や操作性をデモにてご確認いただけます。使い方のイメージを把握したい、使えるか判断したい場合にご活用下さい。SaMMAのデモをご希望の方は、下記よりお申込みいただけます。

デモをご希望の方

デモの申し込みイメージ

OSS情報

パスワード以外の方法も!添付ファイル付きメールを自動で安全化するOSS〜SaMMA〜
SaMMAは、添付ファイルのセキュリティリスクを回避するための、デージーネットが開発したOSSの添付ファイル暗号化ソフトです。ここではSaMMAの機能やメリット、デージーネットの取り組みをご紹介します。
PPAP対策とSaMMA
近年、PPAPにおけるZIP暗号化の脆弱性やウイルス感染の危険性が高いと指摘されており、脱PPAPへの動きが加速しています。ここではPPAP問題点を解説し、解決策としてSaMMAを利用する方法について詳細に紹介します。
標的型メール攻撃対策とSaMMA
ここでは、SaMMAの標的型攻撃対策の機能とデージーネットのサポートについてご紹介します。
標的型攻撃対策の構成例
SaMMAの機能を使って、様々な形で標的型攻撃対策を行うことができます。このページでは、SaMMAによる標的型攻撃対策システムの構成例をご紹介します。
SaMMAクラウドサービス連携機能
SaMMAクラウドサービス連携機能とは、クラウドサービスのメール機能を利用している場合でも、添付ファイルの処理を可能にする機能です。これにより、SaMMAとメール機能を安全に連携することができるようになります。
SaMMAのよくある質問
このページでは、SaMMAや標的型メール攻撃に関してお客様からよくいただくご質問にお答えしていきます。

PPAPのセキュリティ問題を解決できるOSSの代替案とは?〜SaMMA〜の先頭へ