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Linuxメールシステムで無料で使えるおすすめOSS 比較29選(2023年版)

メールシステムとは、メールの送受信、メールの閲覧、メールの管理など、メールに関する基本的な機能を提供するサーバシステムの総称です。メールサーバーの選び方や選ぶ基準は企業や組織体制によって大きく異なりますが、最近ではクラウド上でサービスが展開されているSaaS型のメールシステムを選び、導入する企業も多いようです。しかし、SaaS型のメールシステムには、ユーザ数が多いとコストがかかる、セキュリティが不安、サービスの終了・機能の変更等で継続して利用できない、などといった課題があります。こうした課題は、OSSを利用することで解決することができます。本記事では、Linuxのメールサーバー/メールシステムで使えるおすすめのOSSを分野毎に比較し、ポイントをまとめました。それぞれのソフトウェアの詳細情報や導入事例は、サイト内の別のページで掲載しています。ソフトウェアごとにあるリンクから参考にしてください。

目次:Linuxメールシステムで使えるおすすめOSS

無料のOSSでメールシステムを導入するメリット

無料のOSSでメールシステムを導入するメリット

SaaS型のメールシステムは手軽に導入しやすく、便利な機能が備わっている一方で、「ユーザ数が多いとコストがかかる」「セキュリティが不安」「サービスの終了や機能変更等で継続して利用できない」といった課題もあります。メールシステムにOSSを導入することで、こうしたSaaS型のメールシステムのデメリットを解消することができます。主に以下のようなメリットがあります。

コスト面のメリット

通常、SaaS型のメールシステムでは、月額あたりの料金体系になっているタイプが多く、利用プランによってはアカウント数や月間のメール通数などに応じて従量制の課金が必要なものも少なくありません。そのため、数百名規模の従業員を抱える大企業など、ユーザ数が多く毎月何万通もメールを送受信する組織では費用面でかなりの負担がかかってしまいます。一方OSSは、SaaS型のメールシステムと違い、ソフトウェア自体は無料でライセンス料もかからないため、こうした課金はありません。月額料金を気にせず、初期費用のみでランニングコストを抑えて利用可能です。

また、自社で専用のメールシステムを構築する際、有料のソフトウェアや製品のサーバー等を購入することもできますが、実際にはほとんどのソフトウェアをOSSで入手することができます。無料のOSSを使えば追加の開発費用がかからないため、コスト面の負担を軽減できます。

セキュリティ面のメリット

SaaS型のサービスではメールの情報を外部のサーバに預けることになるため、セキュリティを重視する企業や組織では利用しにくい場合があります。OSSを使えば、オンプレミス環境や自社専用のプライベートクラウドにメールシステムを構築することが出来るため、セキュリティ性を高めつつ、自社の運用方針に合ったメールシステムを構築することが可能です。特に、個人情報や機密情報を頻繁に扱う自治体や金融業界などは、セキュリティポリシーの観点からSaaSの利用が難しいため、オンプレミス環境や自社のクラウド環境に専用のメールシステムを構築することが多いです。

機能面のメリット

基本的にSaaS型のサービスでは、機能のカスタマイズに制限が設けられ、ベンダーが提供している以上のサービスを利用することはできません。そのため、自由度が低いというデメリットがあります。また、従来から利用してきた機能が提供されなくなったり、サポートが終了してしまうケースも少なくありません。OSSはソースコードが公開されているため、事前に自社の使い方や要件に適したソフトウェアを試し、カスタマイズしたり他のソフトウェアと連携したりすることが可能です。そして、利用規模に合せたメールシステムを設置することができるのも魅力の一つです。

メールサーバーの選び方や選ぶ基準は企業や組織体制によって大きく異なりますが、上記のようなメリットから、自社で専用のメールシステムを持つ企業もまだまだ多いようです。以下では、条件にあったソフトウェアを選択する際の参考になるように、デージーネットが構築したメールサーバの経験から、Linuxで利用可能なソフトウェアを紹介します。それぞれのソフトウェアのリンクからは、詳細情報や導入事例もご確認いただけます。

メールサーバのOSS

メールは、インターネットの初期から使われてきた仕組みです。そのため、メールサーバのソフトウェアも、あらゆるソフトウェアが開発されてきました。ここでは、Linuxでよく使われている代表的なメールサーバを紹介します。

Sendmail

Sendmailは、非常に古くから使われているメールサーバ(MTA)のソフトウェアです。歴史が長く非常に多機能なソフトウェアですが、設定の方法が特殊なため、難易度が高いという注意点があります。しかし、非常に高度で複雑なメールの配信にも対応できるという特徴があります。メールの保存は、すべてのメールを1つのファイルで管理するmailbox形式のみをサポートしています。また、外部のソフトウェアと連携して様々な処理を行うためのMilterと呼ばれるAPIが用意されているため、様々なソフトウェアと連携ができます。なお、以前まではSendmailがほとんどのLinuxディストリビューションでメールサーバとして採用されていましたが、Postfixなどのメールサーバソフトウェアが登場したことで、減少傾向にあります。

Sendmail詳細情報 お問合せ

Postfix

Postfixは、高速に操作するメールサーバ(MTA)のソフトウェアです。Sendmailに多数の脆弱性が発見されたことから、開発が行われたソフトウェアです。そのため、Sendmailとは操作方法や設定ファイルに互換性があります。現在はSendmailに代わり、ほとんどのLinuxで標準的なメールサーバソフトウェアになっています。

また、Postfixは、Sendmailに比較して設定が容易なことが特徴です。高速かつ安全に動作するように、機能ごとに複数のコンポーネントに分かれていて、各コンポーネントが高速に動作します。外部のデータベースやフィルタリングソフトウェアと柔軟に連携することができるのも特徴です。メールの保存は、mailbox形式だけでなく、1つのメールを1つのファイルで管理するMaildir形式もサポートしています。

PostfixにもSendmailと同じMilterというAPIが用意されており、様々な外部のソフトウェアと連携することができます。OpenLDAPやMailmanといったソフトウェアの他、デージーネットが開発した、SaMMAやMessasyなどのOSSも、Milterを利用してPostfixと連携し、動作しています。

PostfixOSS情報 Postfix構築事例 お問合せ

Dovecot

Dovecotは、高速でセキュアなPOP/IMAPサーバです。ほとんどのLinuxで採用されていて、POP/IMAPサーバとしては標準的なソフトウェアとなっています。サービスの受付やユーザ認証などの役割に合わせて複数のプロセスを連携することで、高いセキュリティ性を実現しています。アカウント管理には、LDAPやデータベースを利用することが可能です。Dovecotは、maibox形式、Maildir形式の両方をサポートしています。

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Cyrus IMAP server

Cyrus-IMAPは、カーネギーメロン大学で開発されたメールサーバです。POP/IMAPに対応し、独自のデータベースにメールを保管するのが特徴です。外部データベースを利用した認証、アクセスの制御、メールボックスの使用量の制限をサポートするなど大規模運用を意識して開発されています。

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Webメールシステム用のOSS

最近では、クラウドのメールサービスが普及し、ソフトウェアのインストールが不要で、Web上でメールを読むことのできるWebメールシステムの人気も高くなっています。ここでは、オープンソースのWebメールソフトウェアについて説明します。

Roundcube

Roundcubeイメージ

Roundcubeは、Webメールシステム用のソフトウェアです。IMAP4に対応しており、アドレス帳、フォルダ操作、メッセージフィルタなど、機能が充実しています。また、デザイン性・操作性に優れており扱いやすいため、初めての人でも直感で使うことができます。スマホやパソコンなどさまざまなデバイスからの閲覧にも対応しているため、一般的なメールクライアントとほぼ同様に利用できます。さらに最大の特徴として、プラグインが豊富で、自由に機能拡張やデザインの変更をしたり、IMAP認証やOTP認証、OpenID Connectでの認証に対応させることも可能です。

Roundcubeは日本語でも扱うことができますが、日本語での処理は複雑で、完全に対応している訳ではありません。そこでデージーネットでは、Roundcube商用サポートとして、日本語対応を強化したパッケージを提供しています。今まで日本国内のサポートがなく導入をためらっていた、日本語への対応が不十分で利用できなかったという場合にもご活用いただけます。

Roundcube詳細情報 Roundcube構築事例 お問合せ

SquirrelMail

SquirrelMailは、PHPで開発されたWebメールシステムのソフトウェアです。IMAP4に対応していて日本語を含む50以上の言語に対応していました。以前は、使い勝手が良いことから評価も高く、Webメールのソフトウェアとしては代表的な位置付けでしたが、HTML4.0対応など、設計が古くなっているという問題があります。2014年からアップデートが行われなくなり、対応するPHPのバージョンもPHP5.5までとなっています。こうした理由から、SquirrelMailは最近の新しいLinuxでは利用することが難しくなっているため、注意が必要です。

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メールリーダー用のOSS

最近のスマートフォンには、メールを読むためのアプリケーション(MUA)が標準でインストールされています。しかし、PC上などでメールシステムの利用者がメールを読むためには、メールリーダをインストールする必要があります。メールリーダは、メールサーバと通信し、受信したメールの情報を取得して表示します。メールサーバとの通信方式では、メール本文をダウンロードしてPC側で管理するPOP3プロトコルと、メールをサーバ側で保管して必要に応じてデータを閲覧するIMAP4プロトコルが使われています。以下では、Linuxはもちろん、WindowsなどのOSでも動作する一般的なメールリーダを紹介します。

Thunderbird

Thunderbirdは、Webブラウザで有名なFirefoxを管理しているMozillaが提供しているメールリーダです。接続先のメールサーバ等の設定が非常に簡単にできるように工夫されていて、WindowsだけでなくMacOSやLinuxでも利用できます。Thunderbirdはメッセージの高速全文検索が行えるほか、タブ表示、アーカイブ、メールのフィルタリングや自動でのフォルダへの振り分けなど、多くの機能をサポートしている点が強みです。標準で必要な機能が揃っていますが、さらに様々な用途に向けた多数のアドオンも公開されていて、カスタマイズやデザイン変更の選択肢も多いため人気のあるメールリーダです。

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Sylpheed

Sylpheedは、3ペインの形式での表示をサポートしているメールリーダのソフトウェアです。Linux、Windowsなどで動作します。Sylpheedは、細かな動作設定ができることが特徴です。また、Thunderbirdと比べ、シンプルで軽量に動作するというメリットもあります。

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メールサーバのユーザ管理用OSS

メールサーバでは、利用者がメールを読む時や送信する時に、ログインIDとパスワードによる認証を行います。このユーザ管理には、LDAPサーバがよく使われています。LDAPサーバは、人やグループに関する属性情報を集中管理するデータベースサーバです。ユーザ、パスワードに加えて、メールアドレス、メールボックスの使用量の上限など、その他の属性も管理することができます。ActiveDirectoryもLDAPサーバとして利用することができます。

メールサーバでLDAPサーバを使う目的としては、次のような点が挙げられます。

  • 別のシステムで使っているユーザ情報を共有する
  • メールサーバに登録できるユーザ数を無制限にする(Linuxユーザだと上限がある)
  • 複数のメールサーバ間でユーザデータを共有する
  • メールの転送先、メールボックス使用量の上限など、IDやパスワード以外の情報を一括管理する

ここでは、LDAPサーバと、それを管理する管理者用のソフトウェアを解説します。

OpenLDAP

OpenLDAPは、オープンソースのLDAPサーバのソフトウェアです。様々なLinuxで標準的に採用されており、LDAPのサーバとしては標準的な実装となっています。リモートからの管理やLDAPデータのレプリケーションにも対応しているため、大規模なシステムでも利用可能で、デージーネットでも多くのISPのシステムでOpenLDAPを利用した実績があります。

OpenLDAP詳細情報 OpenLDAP構築事例 お問合せ

389 Directory Server

389 Directory Serverイメージ

389 Directory Serverは、高速なLDAPサーバです。もともと製品として販売していたソフトウェアをRedHat社がオープンソース化したものです。OpenLDAPと比較して高速に動作するというメリットがあります。また、OpenLDAPと同様に、リモートからの管理やLDAPデータのレプリケーションに対応しています。RHEL8/CentOS 8では、OpenLDAPに替わり、389 Directory Serverが採用されています。

389DirectoryServer詳細情報 389DirectoryServer構築事例 お問合せ

postLDAPadmin

postLDAPadminイメージ

postLDAPadminは、メールシステムのPostfixとLDAPサーバを連携させた、メールシステム用のユーザ管理システムです。デージーネットが開発し、オープンソースソフトウェアとして公開しているため、管理画面はすべて日本語です。postLDAPadminを使うと、管理者がメールのユーザ管理をWebから行えます。そのため、LDAP管理コマンドの知識を持っていないエンジニア以外の人でも、比較的簡単にユーザの管理が可能となります。また、メールのユーザ登録、削除、編集ができ、メールの転送やメールボックス使用量の制限などの管理もできます。管理者とユーザの両方がログイン可能で、メールユーザが個人のパスワードを変更するUIも備えています。

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PostfixAdmin

PostfixやDovecotでは、LDAP以外のユーザ管理方法もサポートしています。PostfixAdminは、MySQLでユーザ管理を行うメールシステム用のユーザ管理用システムで、オープンソースソフトウェアとして提供されています。メールアドレスの追加、削除をWeb画面から行うことができます。また、複数のドメインを管理することができます。

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メール配信システム用のOSS

最近では、メルマガの配信など、ターゲットへ向けた集客・販促のアプローチを行うツールとして、マーケティングや営業の分野でメールが使われることも多くなっています。そのため、メール配信システムでは、効率的にメールの一斉配信を行うだけではなく、特定の文字列を相手の名前に置換するテンプレート機能やメールの到達の確認などの機能が使われます。また、ソフトウェアによっては、配信の予約や、エラー時の処理なども行うことができます。中には、顧客情報を管理する機能が含まれるものや、マーケティングオートメーション(MA)の機能に特化したソフトもあります。ここでは、比較的シンプルな動作をするメール配信用のソフトウェアについて案内します。

phpList

phpListイメージ

phpListは、高機能なメール配信システムのソフトウェアです。メールマガジンの配信などに使われます。テキストでの配信だけでなく、HTMLでメール作成ができるHTMLエディタを搭載し、HTMLメールの配信もサポートしています。画像付きのインパクトのあるメールを配信することで、メール配信の効果をより高めることもできます。

phpListでは、配信先の情報をCSV形式などで取り込むことができます。そのため、既存の顧客データをそのまま配信先として利用することが可能です。また、送信エラーになった場合に、該当アドレスを自動的に配信停止にしたり、購読解除したりする機能を持っています。さらに、開封情報などの統計情報を取得し、配信したキャンペーンの反応を計測することもできます。

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MagLo

MagLoは、簡易なメール配信システムのソフトウェアです。デージーネットが開発し、オープンソースソフトウェアとして公開しています。配信先ユーザのリストをCSV形式で登録し、一斉に配信することができます。MagLoには、配信時に本文上に記載されたタグをCSVのデータに従って置換する機能があります。また、予約配信にも対応しています。

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Nextcloud Formsプラグイン

Nextcloud Formsプラグインイメージ

Nextcloudは、オンラインストレージの機能を提供するオープンソースのソフトウェアです。Nextcloudに、Formsプラグインをインストールすると、アンケート機能を利用することができます。また、アンケートの集計を自動化すれば、業務効率アップにもつながります。

メール配信の効果測定やマーケティング施策のテストを行うため、読者やお客様にアンケートを実施することがあります。しかし、アンケートを実施するためのフォームの作成には、HTMLやプログラムについてある程度理解している必要があります。そのため、初心者では作成することができません。

NextcloudのFormsプラグインでは、アンケートの質問項目の入力、回答の種別(テキスト入力、チェックボックスなど)の選定、内容の入力などの簡単なステップだけで、誰でも気軽にアンケート・ページを作成することができます。また、アンケートの実施後は、自動的に集計を行い、グラフなどで視覚的に表示することもできます。アンケート結果をCSV形式などでダウンロードすることも可能です。

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メーリングリストシステム用のOSS

メーリングリストは、複数の人に同時に電子メールを配信する仕組みです。最も簡単なメーリングリストの機能は、PostfixやSendmailなどのMTAだけでも行うことができます。しかし、メーリングリストのソフトウェアを使うと、多くのメーリングリストをWebページから管理することができます。また、メーリングリストの参加者の管理機能や、メールのアーカイブ機能なども利用することができます。ここでは、代表的なメーリングリストのソフトウェアを比較しながら紹介します。

Mailman

Mailmanイメージ

Mailmanは、多くのLinuxディストリビューションで標準でパッケージ提供されている、メーリングリストのオープンソースソフトウェアです。メーリングリストの作成やユーザの入会・退会などの処理を、Web画面で行うことができます。また、メーリングリスト毎の管理者の設置や、会員自身によるメーリングリストへの参加と脱退が可能です。さらに、過去に投稿されたメールをアーカイブし、閲覧することもできます。

現在は、Mailman 2にかわる新バージョンとして、Mailman 3がリリースされています。Mailman 2では実装されていなかったマルチドメインの対応や、REST APIの使用が可能となっています。また、Mailman 3ではデータベースにRDBMSを使用します。デフォルトではSQLite3を使用しますが、PostgreSQLやMySQLも使用可能です。

Mailman詳細情報 Mailman構築事例 お問合せ

Sympa

Sympaイメージ

Sympaは、大規模なメールユーザ環境で利用することのできるメーリングリストのソフトウェアです。Mailmanでは、テキストファイルにメーリングリストの情報を登録・管理しますが、ファイルを直接読み込むため、登録メンバーが多くなるとその分処理時間を要します。しかし、SympaはデータベースやLDAPを利用してメーリングリストを管理することで、高速に動作します。そのため、大きな組織での利用や、たくさんのメールの配信を行う必要がある場合に最適なメーリングリストです。管理者WEBでは、ドメインごとに管理画面を用意できるため、異なるドメインのメーリングリストの管理も可能です。

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迷惑メール対策/送信者認証/無害化のOSS

メールは、ビジネスでも重要なツールです。一方、インターネットからの攻撃の対象となったり、情報漏洩の原因となることもあります。そのため、セキュリティに十分に配慮した迷惑メール・スパムメール対策やウィルス対策は、今や必須の機能と言えます。ウィルス対策の製品はかなり価格が高いのですが、この分野ではオープンソースソフトウェアと比較して製品の方がずっと優れています。そのため、製品の利用を検討することをお勧めします。

迷惑メール対策では、パターンやAIなどで迷惑メールを判定するフィルタプログラムを利用するのが一般的です。しかし、最近の迷惑メールは高度化し、このようなフィルタでは判定が難しくなりつつあります。そのため、メールの送信元ドメインが詐称されていないかを調べるためにSPFやDKIMなどの手法が使われてます。また、SPFとDKIMを組み合わせたDMARCも使われるようになっています。

また、自治体や官公庁では、ユーザにメールが届く前に、添付ファイルから実行形式のファイルや自動実行のプログラムを削除したり、HTMLメールをテキストに変換する無害化というセキュリティ対策も行われています。

ここでは、メールシステムで迷惑メール対策やメールの無害化に役立つソフトウェアを紹介します。

Rspamd

Rspamdイメージ

Rspamdは、オープンソースのスパムフィルタシステムです。本文の解析だけでなく、SPF、DKIM、DMARC等を使用した送信ドメイン認証や、送信元のIPアドレスを検査するDNSブラックリストの参照を行うことができます。このように様々な種類のルールや手順を組み合わせることで、スパムの検知率の向上が期待できます。また、スパム判定時のアクションも柔軟に設定することができます。管理はWeb画面から行うことができます。

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ENMA

ENMAは、PostfixやSendmailと連携し、SPFとDKIMのチェックを行うためのソフトウェアです。IIJが開発しオープンソースソフトウェアとして公開しています。デージーネットでも、インターネットサービスプロバイダのシステムでDMARCに対応したメールシステムを構築する場合にENMAを利用しています。ただし、Rspamdのような管理画面はありません。

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SaMMA

SaMMAは、メールの添付ファイルを操作するソフトウェアで、APIを介してメールサーバと連携して動作します。デージーネットが開発し、オープンソースソフトウェアとして公開されています。SaMMAでは、SPFやDKIMの検査情報を元に、送信者が妥当であるかを判断します。受信したメールには、検査の結果が添付されるため、ユーザーが迷惑メールかどうかを判断する基準として利用することができます。怪しい送信者であると判断されると、自動で添付ファイルを削除したり、簡単に閲覧できないようにします。

また、本文や添付ファイルを、自動でテキストやPDFに変換することで攻撃を無害化する無害化モードもあります。こうした機能を使うことで、取引先などを装った標的型メール攻撃を未然に回避することができます。その他、本文に記載されたWebサイトのURLを直接クリックできない形式に変換するなど、フィッシングメールを防止するための対策を行うこともできます。なお、SaMMAのバージョン5.0.3より、クラウドサービスのメール機能を利用している場合でも送信元認証ができるようになっています。

SaMMA(無害化)詳細情報 SaMMA(無害化)構築事例 SaMMA(無害化)サポート お問合せ

MADAI

MADAIは、メールを2つ以上の配信先に複製して配信する機能を持つソフトウェアです。デージーネットが開発し、オープンソースソフトウェアとして公開しています。添付ファイルの削除や無害化を実施した場合に、オリジナルのメールを保管しておきたいというニーズに応えるために作成されました。そのため、メールアーカイブと組み合わせて使われることもあります。

MADAI構築事例 お問合せ

メールの添付ファイル暗号化のOSS

日本国内では、個人情報や機密情報等、重要な情報をメールで届ける時、添付ファイルをZIP暗号化し、パスワードを送るという方法が使われることがあります。この処理は、地味に手間がかかり、さらにユーザが自分で暗号化をするとウィルスチェックを掛けることができないというリスクがあります。そのため、メールシステム側でウィルスチェックを実施した後に自動的に暗号化する方法が取られています。ここでは、添付ファイルを暗号化するソフトウェアを紹介します。

SaMMA

SaMMAは、メールの添付ファイルを操作するソフトウェアで、APIを介してメールサーバと連携して動作します。デージーネットが開発し、オープンソースソフトウェアとして公開されています。SaMMAは、自動的に添付ファイルを暗号化して送付したり、オンラインストレージのNextcloudと連携して添付ファイルを共有する機能も提供しています。

特に、オンラインストレージ連携機能を使うことで、PPAP対策としても有効です。この機能では、メールサーバが自動で添付ファイルを取り出してオンラインストレージ上に配置し、ダウンロード用サイトのURLを送信先へ共有します。万が一メールを誤送信した場合でも、オンラインストレージから添付ファイルを削除することで情報漏洩を防ぐことができます。なお、添付ファイルの暗号化やサイトのURLリンクの挿入は、あらかじめ指定した宛先だけに実施するようユーザが個別の設定をすることも可能です。

もちろん、添付ファイルの暗号化やオンラインストレージとの連携は、手動で行うこともできます。しかし、とても煩雑で時間がかかる上、作業を徹底することが困難です。SaMMAは、メール送信時にこれらの処理を自動化し、システムで確実に実行します。そのため、作業の効率化だけでなく、セキュリティ性を高める上でも効果的です。

SaMMA(添付ファイル暗号化)詳細情報 SaMMA(添付ファイル暗号化)構築事例 お問合せ

メールアーカイブシステム用のOSS

ビジネスで重要な情報を交換する手段でもあるメールは、実際に交渉した記録が裁判などにも使われます。情報漏洩が発生した時には、メールが漏洩元として疑われる場合もあります。そのため、外部とやりとりしたメールを保管しておくことが重視されるようになっています。やり取りを残しておくことで、セキュリティ攻撃や配信の遅延などの原因調査に役立ち、さらにPCやサーバにトラブルが起きた際のデータ消失も防ぐこともできます。

メールの管理をユーザに任せておくと、ユーザは読み終わったメールを削除してしまう可能性があります。そのため、メールアーカイブシステムではユーザの操作とは関係なく、送受信したすべてのメールデータを保管するのが一般的です。メールアーカイブは、メールシステムの配信経路上に配置されます。ここでは、メールアーカイブシステムのソフトウェアを紹介します。

Messasy

Messasyは、メールアーカイブを行うためのオープンソースソフトウェアです。製品のメールアーカイブシステムは比較的に高価なものが多いですが、オープンソースを活用することで低価格で導入する事ができます。Messasyは、メールサーバと連携し送受信したメールをMaildir形式で保管することができます。ただし、保管したメールを閲覧する機能はありません。そのため、DovecotなどのMaildir形式をサポートしているIMAPサーバが必要です。また、メールアーカイブを閲覧するソフトウェアも別に必要で、Roundcubeが推奨されています。

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Apache Solr

Apache Solrは、全文検索の技術を使って、メールの検索の速度を高速化するために利用できるオープンソースのソフトウェアです。Dovecotと連携して動作します。ユーザがメールの検索を行うと、Dovecotがリクエストを受け付け、Apache Solrの全文検索のエンジンを利用して高速な検索を実施し、結果を返却します。特にメールアーカイブサーバに保存された大量のメールから必要なメールを探すためには高速な全文検索の機能が欠かせません。そのため、Messasyと合せて利用されます。

Apache Solr詳細情報 Apache Solr構築事例 お問合せ

メールログ解析システム用のOSS

メールのログは、利用頻度やコミュニケーションの状況などを分析するための大切な情報源になります。また、メールが届かなかったりした場合には、原因をログなどを使って調査する必要があります。ここでは、ログを分析して活用するためのソフトウェアを紹介します。

pflogsumm

pflogsummは、Postfixのメールログを解析し、レポートを作成するソフトウェアです。一時間毎の送受信数、エラーメールの傾向、多くのメールを配送しているアドレスなどの統計情報を分析し、テキスト形式で出力することができます。

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Graylog

Graylogイメージ

Graylogは、オープンソースのログ管理ソフトウェアです。メールサーバのログを蓄積し、高速な全文検索を行うことができます。また、ログの内容を自動的に解析し、管理者に通知を届けたり、ランキングやグラフなどの形式で表示したりことができます。大量のログを管理する必要がある場合に利用します。ただし、画面は英語表記のため、利用方法が分かりにくいという課題があります。これに対処するため、デージーネットでは、独自に作成した日本語マニュアルを無償提供しています。

Graylog詳細情報 Graylog構築事例 お問合せ

メール依頼管理システム用のOSS

業務の依頼をメールで受け付けるケースが増えています。このような業務形態では、メールを適切に管理しないと、対応漏れにつながることがあります。ここでは、メールの依頼を管理するソフトウェアを紹介します。

CuMAS

CuMASイメージ

CuMASは、デージーネットが開発した、問い合わせメールを一元管理するためのOSSです。受け取ったメールをサブジェクト毎に分類し、ジョブとして管理します。電話などで受付をした場合には、手動でジョブを作成することもできます。作成されたジョブに対し、担当したメンバーの対応履歴や作業の進捗の登録などを行うことができます。

CuMASでは、問合せ日時や最終更新日時を管理しているため、長く滞留しているジョブを把握することができ、業務品質の改善にも繋がります。更新されずに一定の期間が過ぎた問い合わせに対しては、担当者に自動で通知メールを送信する機能も用意されています。また、業務の依頼カテゴリ毎にあらかじめメールアドレスを作成し、CuMASに転送することで、組織内の様々な業務を一括して管理することができます。

なお、デージーネットでは2022年よりCuMASのクラウドサービスも提供しています。月額30,000円(税別)~、カテゴリ・アカウント数の制限なしで利用可能なため、ユーザ数の少ない中小企業の方でも導入しやすくなっています。保守サポートも充実しているため、不明点があった際も安心です。お試しのトライアル期間であれば30日間無料でお使いいただけます。

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メールサーバ冗長化用のOSS

メールは今やビジネス上の重要なコミュニケーション手段になっているため、サービスが停止すると業務に支障が出ます。また、システムの障害やハードウェアの故障などでメールが失われると、顧客や取引先とのトラブルになる場合があります。そのため、サーバには停止しないようにする対策が常に求められます。ここでは、サーバの冗長化を行うためのソフトウェアについて紹介します。

Pacemaker

Pacemakerは、2つ以上のコンピュータを使って、システムを冗長化するためのソフトウェアです。オープンソースソフトウェアとして公開されていて、デージーネットでは以前からメールサーバを冗長化するのに利用しています。Pacemakerでは、クラスタ内で提供するサービスをリソースという単位で管理し、リソースの状態をチェックしたり、サービスの起動や停止を行います。

Pacemaker詳細情報 Pacemaker構築事例 お問合せ

Corosync

Corosyncは、サーバの動作を監視するためのソフトウェアです。オープンソースソフトウェアとして公開されていて、Pacemakerと組み合わせることで、HAクラスタを構築することができます。また、多数サーバの監視にも対応しています。

Corosync詳細情報 Corosync構築事例 お問合せ

DRBD

DRBDは、ネットワークでつながっている2つのサーバの間で、リアルタイムにデータを同期するためのソフトウェアです。データ同期は、ファイル単位ではなく、ディスクパーティション単位で行います。そのため、様々な用途でデータの冗長化を行うことができます。2つのサーバのうち片方を稼動系、もう片方を待機系として利用するのが一般的です。稼動系のサーバが停止した事をCorosyncで検知し、Pacemakerを使ってサービスを切り替えることで、メールサーバを冗長化することができます。

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